中国の2014年GDP(国内総生産)は前年比7.4%の成長となった。目標だった7.5%を下回り、1999年以来の低い成長率だった。工業、投資、消費などの指標がいずれも前年値を大きく下回り、市場では景気減速感が漂う。中国政府は14年11月の利下げに続く追加金融緩和のタイミングを探る一方、「新常態(ニューノーマル)」という新たな成長方式の下で「量より質」を目指した経済構造の転換を推し進めている。
雇用は確保、サービス業が躍進
中国国家統計局の馬建堂局長は1月20日、経済指標発表後の記者会見において、「成長率7.4%は『新常態(ニューノーマル)』下の経済発展の規律に合致する」と強調した。その上で、「経済運営が総体的に安定」「構造最適化」「質的向上」「民生改善」の面で進歩があったとした。
確かに、都市部の新規就業者増加数は1322万人と目標の1000万人を大きく上回り、景気減速に伴う雇用縮小という事態は避けられた。第三次産業は8.1%成長し、経済全体のサービス業比率が48.2%まで高まるなど、「工業けん引型」から「サービス主導型」へと経済構造の転換が進んでいる。
それでも、経済指標はさえない。2014年10~12月期のGDP成長率は前年同期比で7.3%、前期比で1.5%に減速(グラフ②参照)。14年通年の鉱工業生産は前年比8.3%増(13年は同9.7%増)、都市部固定資産投資は同15.7%増(同19.6%増)、社会消費品小売総額は同12.0%増(同13.1%増)と、いずれも前年の成長率を下回った。貿易(輸出入)は前年比2.3%増にとどまっている。
消費と工業は下げ止まりか
各指標を月次ベースで比較してみると、消費と工業は若干の下げ止まり感がある(グラフ③参照)。前年同月比成長率は、社会消費品小売総額は11.7%(14年11月)⇒11.9%(同12月)、鉱工業生産は7.2%(同)⇒7.9%(同)と足元で改善。いずれもリーマン・ショック後の水準近辺まで低下しており、今後株高による資産効果の高まりや製品在庫の消化が進めば、消費と工業生産にプラスの影響を与えると思われる。
一方、投資は右肩下がりの傾向が続く(グラフ④参照)。在庫消化が進んでも生産能力過剰という根本的な問題は放置され、不動産市場の調整というマクロコントロール策も継続している。14年11月の利下げに続く追加金融緩和が行われれば、資金調達コストの低下が設備投資へのインセンティブ向上につながり、また住宅購入規制が緩和されれば住宅市場のテコ入れになろうが、まだ不透明な状況が続きそうだ。
消費で明暗、ネット産業が成長
消費の中では、スマートフォンなどが中心の「通信機材」の成長率が大きかった(グラフ⑤参照)。対照的に、「ぜいたく禁止令」の徹底に伴い「飲食」や「金・銀・ジュエリー」の成長は減速した。また、14年通年のインターネット小売が前年比49.7%増、宅配業務が同51.9%増など、ネット通販を中心とした新たな産業が大きく成長した。一方、市民収入の伸び率が若干低下傾向にあることは気がかりだ(グラフ⑥参照)。
(投資調査部 奥山)