中国株式市場は2011年に入り、インフレ高進、それに伴う金融引き締め懸念、北アフリカ・中東情勢の緊迫化などの外部要因により、さえない展開が続いている。中国の上海総合指数と香港のハンセン及びH株指数の動きは必ずしも連動していないが、反発に転じそうな場面で前述の各要因により上値を抑えられる傾向にある。
しかしながら、この弱気ムードが一巡すれば、金融政策などの悪材料出尽くし感も意識され、年央から年後半に向けて上昇基調になることも予想できる。ポイントは、3月5日から開催される中国の全国人民代表大会(全人代)を通じた政策や、3〜4月にかけて発表が集中する上場企業決算の上振れ期待だ。過去数年の相場傾向を見ても、全人代後に相場が右肩上がりになるというケースが多く、昨年から続くもみ合いからの上放れが想定できよう。
全人代後に株価上昇の傾向、決算発表は3〜4月がピークに
中国政府は10年10月、国家的な戦略的産業として次世代情報技術(IT)、省エネ・環境保護、新エネルギー、バイオ、ハイエンド製造設備、新素材、新エネルギーカーの7産業を選定した。その際、同7産業がGDP(国内総生産)に占める比率を2015年までに8%前後、20年までに15%前後まで高めることを中長期的な発展目標として設定。産業別の具体的政策内容は不明だが、今回の全人代での新五カ年計画採択を経て、投資額や市場規模の拡大目標、補助金などの各種支援策が発表されると思われる。特に、新エネルギー、バイオ、電池自動車などの新エネルギーカーの関連企業の動向が注目されそうだ。
過去5年間の相場動向を見ると、全人代の開催(毎年3月)後に株価が上昇基調を示す傾向が確認されている。ハンセン指数を例に取ると、2月末から4月末(労働節連休前)にかけては「5連勝」(いずれの年もプラス)、同じく9月末(国慶節連休前)までは「4勝1敗」(08年のみマイナス)という結果だった(チャート、表参照)。08年のリーマン・ショックなどの特殊要因はあるものの、全体的には、「年初から旧正月(春節)にかけてはおとなしい相場。全人代開催と企業業績発表をきっかけに上昇」という傾向が読み取れよう。
その企業業績だが、各上場企業の10年12月期決算発表は3〜4月に集中する。全人代を経た政策期待から相場全体が上向きに転じれば、好業績見通しを発表している銘柄、もしくは正式発表で好業績が確認された銘柄が素直に買われる展開が考えられる。香港上場の主な企業では、中国南車(01766)、長城汽車(02333)、東方電気(01072)などが50〜60%以上の増益見通しを明らかにしており、中国東方航空(00670)や中国南方航空(01055)は純利益が前年比でそれぞれ約10倍、約15倍になったもようだ(下表参照)。
インフレと引き締め懸念は相変わらずか
一方、市場動向に影響を与えうるリスク要因ももちろんある。まずはインフレ懸念から来る金融引き締めの継続だ。
中国の消費者物価指数(CPI)上昇率は、10年11月に前年同月比で5.1%まで高進。同12月は4.6%まで低下したものの、今年1月は再び4.9%まで上昇した。1月分から食品価格の構成ウエート引き下げなどがあり単純比較はできないものの、中国政府が今年のインフレ目標値として掲げた「4%前後」を上回っていることは事実。
北部の干ばつの影響で小麦の先物価格が1月中旬以降の1カ月で約15%上昇しているとも伝えられ、将来的なインフレ圧力になる可能性がある。インフレ進行は預金準備率や金利の引き上げ懸念を強めることになり、引き締め警戒感から株価のさえない展開が継続……というシナリオも十分に考えられよう。ただ、昨年から3度の利上げ、8度の預金準備率引き上げが続いていることから、市場では引き締めはすでに織り込み済みとの見方もできる。
このほかのリスクとしては、北アフリカ・中東情勢の混乱長期化による原油価格の上昇が世界的な景気回復の流れを後退させることも想定される。株式から金などの安全資産への資金逃避が進む事態も起こり得よう。また、昨年末から今年1月にかけて話題となり、ハンセン指数などの押し上げ要因となった「香港市場での人民元建て商品の登場観測」も、実施時期の遅れなどが伝えられれば市場の変動要因となりそうだ。
中国の消費者物価指数(CPI)上昇率は、10年11月に前年同月比で5.1%まで高進。同12月は4.6%まで低下したものの、今年1月は再び4.9%まで上昇した。1月分から食品価格の構成ウエート引き下げなどがあり単純比較はできないものの、中国政府が今年のインフレ目標値として掲げた「4%前後」を上回っていることは事実。
北部の干ばつの影響で小麦の先物価格が1月中旬以降の1カ月で約15%上昇しているとも伝えられ、将来的なインフレ圧力になる可能性がある。インフレ進行は預金準備率や金利の引き上げ懸念を強めることになり、引き締め警戒感から株価のさえない展開が継続……というシナリオも十分に考えられよう。ただ、昨年から3度の利上げ、8度の預金準備率引き上げが続いていることから、市場では引き締めはすでに織り込み済みとの見方もできる。
このほかのリスクとしては、北アフリカ・中東情勢の混乱長期化による原油価格の上昇が世界的な景気回復の流れを後退させることも想定される。株式から金などの安全資産への資金逃避が進む事態も起こり得よう。また、昨年末から今年1月にかけて話題となり、ハンセン指数などの押し上げ要因となった「香港市場での人民元建て商品の登場観測」も、実施時期の遅れなどが伝えられれば市場の変動要因となりそうだ。
(アジア部 奥山)