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今月の特集記事【特集1】人民元オフショア市場の確立目指す香港 元建て商品の市場拡大へ、環境整備急ピッチ(2/1)

1.香港における人民元預金・人民元建債券発行が急拡大

香港の銀行における人民元預金残高の推移  2010年6月19日付中国人民銀行発表文(2008年7月以来の人民元レートの対ドル実質固定を解除)及びその3日後に発表された通達(2009年7月から試験的に始まった人民元での貿易決済の対象地域を上海・広州・深セン・珠海・東莞の5市から20省に拡大。昨年12月には、これを利用する輸出企業の数はそれまでの365社から67,359社に急増)をきっかけに昨年7月以来、人民元先高観の下、香港市中銀行における人民元預金が急増している(2010年11月末現在で約2,800億元)。

  CEPA(経+済貿易緊密化協定)や「自由行」(中国人の個人旅行ビザ解禁)、香港市中銀行による人民元業務の取扱、人民元を用いた貿易決済といった一連の規制緩和に人民元先高観も加わり、香港の銀行システム及び民間に溜まっている人民元は拡大の一途を辿っている。こうしたユーロダラーならぬ「香港元」はより有利な運用先を求めて、銀行預金だけでなく、香港で発行された数少ない人民元建債券(本格的な投資には物足りないことから「点心債」という愛称がついている)にも向けられている。

  また、香港の金融機関にとってみれば、巨大なビジネスチャンスにもつながるため、香港元の受け皿作り(元建債券、元建株式、NDFなどの金融デリバティブの導入・拡大)がすでに急務となっている。元建株式については、長江実業による元建REITのスピンオフ上場が第1号として年内に登場する可能性が高いと報じられている。それよりも、足元では元建債券の発行がすでに急拡大の様相を呈している(一覧表を参照のこと)。

香港で発行される人民元建債券のメリットvs.デメリット  香港における人民元建債券発行拡大の背景として次の2点が指摘できる。(1)2007年6月より、本土金融機関による香港での元建金融債の発行が可能となった。発行体の範囲は2009年に中国財政部と香港市中銀行の本土子会社、2010年には国際金融機関、香港企業、多国籍企業へと順次拡大してきた。(2)上表の通り、発行体と投資家のニーズがうまくマッチしている。

  香港での人民元建債券の発行残高は2011年1月中旬現在で約630億元程度だが、ネックとなっている本土への資金還流がよりスムーズになれば、人民元預金とともに、数年以内に数兆元規模の市場に拡大する観測もある。

2.人民元オフショア市場をめぐる最近の動き

【債券関係】
◆本土不動産デベロッパーによる香港での仕組債の発行が急増している。こうした仕組債は、元本が人民元建てだが、購入・利払・譲渡・償還の際はその時点の人民元/米ドルレートに基づいて米ドルで決済するところに特徴がある(いわば元建固定利付債に為替スワップを付加したもの)。

(1)上海「新天地」の開発で知られる瑞安房地産(00272)の傘下企業が昨年12月23日に上記仕組みに基づく30億元の元建債券(満期3年、表面利率6.875%)を発行

(2)恒大地産集団(03333)は同じ仕組みの3年債と5年債を近く発行する計画。発行額は66億〜100億元となる予定で、表面利率は3年債が7.50%、5年際が9.25%となる見込み。ちなみに、同社は昨年前半に計13.5億ドルの米ドル建て社債(満期5年、表面利率13%、シンガポール証券取引所上場)を発行したばかりである

(3)中駿置業(01966)は今年1月14日、20億元の仕組債(満期5年、表面利率10.5%)を発行

(4)米ドル建て債券、又は元建て・米ドル決済債券を近く発行する予定の企業は、中化化肥(00297)、西部水泥(02233)、太古(00019)傘下の不動産子会社などがある

◆中銀香港は2010年末に人民元オフショア債券指数(2010.12.31=100)の算出・公表を始めている。

◆海通香港(2010年11月「海通国際」に社名変更)と恒生銀行が2010年8月、11月にそれぞれ人民元債券ファンドを立ち上げているほか、今年に入り工銀亜洲、建銀国際も同種ファンドの設立計画を表明している。

【銀行関係】
◆2004年にスタートした香港市中銀行による人民元業務は当初、個人向け預金・送金・両替(一人一日当たり2万元相当が上限)・クレジットカードのみであったが(個人向けではその後、人民元建債券・人民元建保険の販売・取引もできるようになった)、2005年に小売・運輸など7業種の香港企業による人民元口座開設(人民元の預け入れ、元の香港ドルへの両替は可能、香港ドルから元への両替は不可)が可能となり、2010年7月には中国人民銀行と香港金融管理局(HKMA)の合意を経て、「香港元」のコール市場ができあがり、香港での人民元の銀行振替・振込や、企業による香港ドルから人民元への両替も無制限となった。

◆香港市中銀行による人民元業務の規模を制限する措置(各行の正味の人民元ポジションは元建資産と元建負債のいずれか多い方の10%を超えてはならない)が2011年1月1日付で導入された一方、一部の香港市中銀行による本土銀行間債券市場への取引参加が認められた。

◆中国銀行の在米支店(ニューヨーク、ロサンゼルス)は昨年末頃から、人民元業務の範囲を大幅に拡大している(人民元の現金両替:預金者1人1日当たり4千ドル相当以内、年間2万ドル相当以内。個人・法人による人民元普通・定期預金口座の開設、人民元口座での銀行振替や貿易決済など)。

3.人民元オフショア市場の見通し

◆オフショア市場の確立を契機に、人民元の為替自由化は今後、想定以上のペースで進展する可能性がある。当面は、(1)本土への人民元資金の還流、(2)QDIIやQFII(本土金融機関の海外支店・子会社を対象とするミニQFII含む)、QFLP(海外機関投資家による中国PE投資関連)制度の間口を広くすること、の2点で一層の規制緩和が期待される。

◆貿易決済での元の利用拡大が米ドルへの需要減少にも繋がるため、足元の元高・ドル安傾向に拍車がかかる可能性もある。

◆ロンドンの国際金融センターとしての地位にユーロダラー市場が大きく貢献しているのと同じように、人民元オフショア市場の中心地としての地位が確立されれば、香港の金融・経済に大きな好影響を及ぼすことも考えられる。

◆人民元建債券・株式・REIT・金融デリバティブの商品開発に注力している香港交易所(00388)や、香港及びその他海外における人民元オフショア取引で優位に立つ中国銀行(03988)及びその子会社の中銀香港(02388)など、人民元オフショア取引に携わる香港の主要金融機関株が注目されそう。

香港における人民元建債券発行の状況

(上海事務所 張)

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