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今月の特集記事特集1:来年は安定成長、規模拡大から実力強化へ 〜中国自動車産業の2011年の展望〜

  中国の2010年1〜10月累計の自動車販売台数は前年同期比34.8%増の1,467万7,000台と、過去最高を記録した2009年の通年実績1,364万4,800台を上回った。各種政策が10年末で期限切れとなることから、年末にかけての駆け込み需要に期待が集まる。通年の中国の自動車販売台数は1,700万台を上回り、2年連続で世界1位となる見通しだ。反面、2011年は各種政策の期限切れにより、小型車を中心に反動減となる懸念がある。しかしながら、依然として潜在需要は高く、一時的に反動減が見られても、(1)沿岸部の2台目需要、(2)内陸部のマイカーブーム、(3)中・大型車の好調などにより、通年での影響は限定的になると思われる。

1.販売台数は2009年の通年実績を上回り、過去最高を更新 〜2010年1〜10月の販売状況〜

  2010年1〜10月累計の新車販売台数(中国内生産分、商用車、輸出を含む)は前年同期比34.8%増の1,467万7,000台と、過去最高を記録した2009年の通年実績1,364万4,800台を上回った。通年でも09年に続き、2年連続で世界1位となる見通しだ。うち、乗用車は同35.5%増の1,110万600台、商用車は同32.4%増の357万6,400台。乗用車の好調に加えて、前年同期は金融危機の影響で落ち込んでいた商用車が回復したため、ほぼ同水準のバランスの良い成長となった。商用車の回復は「以旧換新」(買い替え補助)の支給額引き上げも後押しした。乗用車の内訳は、セダンが同29.6%増の763万9,600台、多目的車・ミニバン(MPV)は同86.5%増の35万4,200台、多目的スポーツ車(SUV)は同108.3%増の105万8,600台、軽ワンボックスほかは同28.1%増の204万8,200台だった。09年は小型車(1600cc以下)購入減税が追い風となり、全乗用車販売台数に占める小型車の比率は通年で69.6%に上った。今年は減税率が縮小したものの、10年6〜9月にかけて中国政府は燃費を従来基準から20%改善した小型車を対象に、購入時に1台当たり3,000元を支給するとした。これを受け、1〜10月累計の全乗用車販売台数に占める小型車の比率は68.4%と前年比では低下したものの、高水準を維持した。さらに、中・大型車(1600cc超)やMPV、SUVの販売も伸び、中・高級車種の需要増加もみられた。また、「汽車下郷」(農村部の購入補助)対象の軽ワンボックスほかの販売も堅調に推移した。

1〜10月自動車販売台数

2.売上高の伸びが人件費の上昇を上回る、高級車が好調

  10年第1四半期(1〜3月)の自動車販売台数は過去最高となり、09年の勢いを引き継いだ。しかし、その直後に(1)最低賃金の引き上げやストライキに伴う労働コストの増加、(2)株価や不動産価格の下落に伴う逆資産効果による販売減少懸念、などネガティブな要因が浮上した。さらに、自動車販売台数が4〜7月まで4カ月連続で前月比マイナスとなったことで、投資家の間では成長鈍化見通しが大勢を占めた。

  まず、(1)は、自動車メーカー各社の売上高に占める労働コストは数%と1割にも満たないため現時点での影響は限定的だった。10年6月中間期の広州汽車集団(02238)の決算では人件費が前年同期比10.2%上昇したものの、売上高の伸びが人件費の上昇を上回り、売上高人件費率は0.7pt低下した。このように高利益率の車種の強化やコスト管理を徹底するなど各社で様々な企業努力が見られた。労働コストの増加により、今後も投資環境の悪化や、インフレ懸念のリスクはあるものの、各社の利益率の低下やストライキによる生産停止のリスクから一転、購買力の向上による需要増加が期待でき、これを取り込んだ企業は恩恵を受けることが予想される。

  次に(2)であるが、特に高級車の販売台数の落ち込みは見られず、株価や不動産価格との相関性はまちまちだった。独ダイムラーのメルセデス・ベンツの販売台数(香港含む)は第1四半期(1〜3月)が2万4,549台、第2四半期(4〜6月)が3万7,166台、第3四半期(7〜9月)が4万3,007台。独BMWグループ(ロールス・ロイス除く)の販売台数は第1四半期が3万4,179台、第2四半期が4万1,436台、第3四半期が4万6,211台と、いずれも増加基調が鮮明であり、前年同期比でほぼ倍増した。したがって、販売台数が前月比で減少した要因は逆資産効果よりも、季節的要因が現れた結果であると思われる。前年を除く(政策発表直後ということもあり、急速な販売増加を記録したため)と、販売台数は例年、3月をピークとして夏場に向けて減少し、8、9月から再び増加に向かう周期性がある。10年は4カ月連続で前月比マイナスとなったが、この周期性と同様に、7月をボトムとして9、10月は単月で過去最高水準の150万台の大台に回復した。

3.政策期限切れの影響も限定的か、潜在需要の取り込みに注力 〜2011年自動車産業の展望〜

自動車販売台数の推移  09年1月に重点10産業の産業振興政策の一つとして「自動車産業調整振興計画」が発表された。振興計画は09〜11年までの3年間を対象期間として、(1)消費需要の安定的拡大(2)企業体質の向上(3)新たな競争優位性の実現を目指し策定された。これらを達成すべく各種政策を実施しており、今年は新たに前述の通り省エネ車へ購入補助金を支給し、一定の効果を上げている。また、中国政府は自動車産業の「第12次五カ年計画(2011年〜15年)」を現在策定中である。草案によると中国の自動車産業は今後5年間で、これまでの「規模拡大」から、「実力強化」へと転換していくという。具体的には、新エネルギー車を含む省エネ車の発展を提唱していく一方で、合併・買収(M&A)や立ち遅れた生産能力の淘汰などを通じて構造的な生産能力の過剰を解決する。2015年の自動車生産・販売台数の目標は2,500万台とし、自主ブランド車の市場シェアを拡大し、同国内シェア50%以上(うち同セダンは40%以上)を目指す見通しだ。

  前年に続き、販売促進効果を発揮した「汽車下郷」「小型車購入減税」や「以旧換新」は10年末で期限切れとなることから、年末にかけての駆け込み需要に期待が集まる。今年の中国の自動車販売台数は1,700万台を超える見通しだ。反面、2011年は各種政策の期限切れにより、一時的に小型車を中心に反動減となる懸念がある。しかしながら、(1)依然として潜在需要は高く、(2)中・大型車の需要が下支えし、一時的に反動減が見られても、通年での影響は限定的になると思われる。

  まず、(1)は、中国は膨大な人口に対して保有率が低く、広大な国土の移動手段としての潜在需要が高い。09年末時点の中国の自動車保有台数は6,280万6,086台で、1,000人当たりでは47台となる。日本は同590台、米国は同796台(08年)であり、仮に中国の自動車普及率が日本並みになれば、保有台数は約7億9,400万台まで増加。現在の約10倍以上の潜在需要があることになる。景気拡大を背景にマイカーブームが沿岸部から内陸部など全国に広がっている。沿岸部では2台目需要が期待でき、堅調に推移すると思われる。

  次に(2)であるが、前述の高級車に加え、SUVなどの大型車も好調だ。SUVの販売台数は第1四半期が26万8,700台、第2四半期が31万8,400台、第3四半期が35万2,000台と、増加基調が鮮明であり、高級車と同様に前年同期比でほぼ倍増で推移している。これらは、沿岸部を中心に購買力が向上し、それぞれのライフスタイルに合わせて好みが多様化していることが背景にある。中・大型車は購入減税などの政府支援がないなかでも販売が好調であり、所得向上に伴い高い成長が続く見通しだ。

  メーカーは新製品投入や販売体制を変化させ、潜在需要の取り込みに注力している。サービス向上で顧客の囲い込みを目指すメーカーは4S店(車両販売、部品販売、アフターサービス、顧客情報の管理・活用の4機能を持つ店舗)の出店を加速させている。潜在需要の取り込み戦略がメーカーによって異なるため、11年も10年と同様に戦略次第でメーカー間の収益力の格差がはっきりと表れるだろう。

(アジア部 星)

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