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今月の特集記事中国人民銀行が利上げ、影響は限定的(11/2)

  中国人民銀行(中央銀行)は10月19日、07年12月以来となる利上げを行った。政策金利である1年物預金金利と同貸出基準金利を0.25%引き上げ、それぞれ2.50%、5.56%とした(表1)。インフレ圧力を抑制し、マイナス金利状態を逆転させ、資産価格の上昇抑制に向けた政策対応を示した。ただ、本格的な金融引き締め政策への転換とはならず、内外の金融・経済情勢に対応する形で今後も柔軟な金融政策を図ると見られる。足元では、依然として金利水準は低く、利上げによる景気への影響は限定的であろう。実質預金金利もマイナス金利状態であり、株式市場への資金流入期待は根強く残る。

  本稿では9月の各種経済指標を通じて、利上げに至った背景と堅調な景気動向を確認する。

金融機関の人民元建預金、貸出の基準金利(10/20以降)

  中国人民銀行はインフレ率の上昇懸念に対して資金供給を調整しており、09年後半には金融機関に対する窓口規制で対応した。今年に入り1月と2月、5月の3回にわたり預金準備率を引き上げ、金融引き締めの姿勢を示した。しかし、依然として、銀行融資が拡大基調であったことなどから、10月11日には国内大手銀行6行を対象に時限措置的に預金準備率を0.5%引き上げる方針を示した。さらに、10月19日、中国人民銀行は07年12月以来、2年10カ月ぶりに利上げを行った。政策金利である1年物預金金利と同貸出基準金利を0.25%引き上げ、それぞれ2.50%、5.56%とした。

  中国人民銀行が予想外の利上げに踏み切った背景として、(1)消費者物価指数が政府通年目標の3%を上回る状況が継続(2)不動産価格が最高値水準へ上昇(3)景気の減速局面が終了したことが挙げられる。以下、足元の状況を各種経済指標で確認する。

CPIの上昇は食品と住宅がけん引

主要70都市の不動産販売価格の推移(前年同月比の変化率)
  まず、9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.6%増と前月(同3.5%増)から加速し、3カ月連続で政府のインフレ目標(3%)を上回った(4P参照)。9月のCPIの上昇は食品と住宅がけん引した。穀物と生鮮品価格上昇から食品は同8.0%増、住宅は同4.3%増と高い伸びとなった。反面、衣料品(8月1.2%減→9月1.5%減)、運輸通信(8月0.6%減→9月0.7%減)などはマイナス幅が拡大するなど、その他は総じて安定した推移となっている。

  不動産について、当局は4月より投機抑制策を厳格化した。9月までで、1軒目購入時の住宅ローン頭金比率を従来の20%から30%へ引き上げ、2軒目購入については住宅ローン頭金比率50%以上及び貸出基準金利の1.1倍以上の金利を適用、3軒目購入向け住宅ローンは一時的に全面停止などの措置がとられている。これらを受け、主要70都市の不動産販売価格上昇率は今年4月をピークとして調整していた。しかし、9月は前年同月比では9.1%上昇(表2)。前月(同9.3%上昇)の伸びからは鈍化したものの、前月比では0.5%上昇し4カ月ぶりに反転した。さらに、同不動産価格は5月のピークを超えて最高値となった。

経済指標は堅調な成長を示す

  最後に足元の好調な景気動向だが、7〜9月期の実質GDP成長率は前年同期比9.6%増と前期(同10.3%増)から伸びが鈍化した。事前にインフレ率の高まりなどの影響で景気減速が懸念されていたものの、巡航速度での成長が示されたと言えよう(4P参照)。なお、内陸部での干ばつや洪水の影響で農業など第1次産業は減速したものの、第3次産業は拡大基調が続いたほか、減速傾向が続いてきた製造業など第2次産業では加速に転じるなど、全体的には底堅さが確認された。

  9月の鉱工業生産は前年同月比13.3%増と前月(同13.9%増)から伸びが鈍化した(3P参照)。これは、特殊要因として中国政府が設定した省エネ・排出削減目標を達成するため、一部製造業による生産抑制が影響したと言える。中国政府は今期五カ年計画(2006〜2010年)で、単位GDP当たりのエネルギー消費量を20%削減する方針を打ち出している。2009年までに15.6%削減したものの、今年1〜6月は0.1%の増加に転じていた。これを受け、各地方政府はエネルギー消費量と温室効果ガスの排出量が多い鉄鋼、セメントなどの業界に対して、電力供給を制限し、減産を迫ったことが伸び鈍化の背景にある。反面、業種別では、汎用設備製造が同20.2%増、電機が同18.2%増、自動車が17.8%増、非金属鉱物製品が同16.7%増と堅調な伸びを示した。

  9月の小売売上高は前年同月比18.8%増と前月(同18.4%増)から0.4pt上昇(3P参照)。最低賃金の引き上げなどによる購買力の向上により、個人消費の底堅さが示された。低燃費車の購入支援を追い風とし、自動車販売が同29.7%増と好調。中国政府は6月、規定の燃費水準に合致するガソリン車やディーゼル車の購入に対して、全国で補助金を支給するとし、現在第3陣まで発表した。排気量1600cc以下で、燃費を従来基準から20%改善した自動車を対象に、1台当たり3,000元を支給する。これらの補助金支給対象車に加え、購買力の向上に伴い中・高級車の販売も好調で、小売売上高の押し上げ要因となっている。このほか、宝飾品が同54.9%増、建材が同39.0%増と高い伸びを示したほか、食品(食用油、飲料、酒・たばこを含む)が同31.9%増、石油・石油製品が同29.3%増、日用品が同28.9%増、家電・音響製品が同28.5%増、アパレルが同26.7%増といずれも堅調な伸びを維持した。

実質金利は依然マイナス、根強い株式市場への資金流入期待

  上述の各種経済指標を通じて、(1)消費者物価指数が政府目標の3%を上回る状況が継続(2)不動産価格が最高値水準へ上昇(3)景気の減速局面が終了したことが確認できる。中国人民銀行は利上げを通じて、インフレ圧力を抑制し、マイナス金利状態を逆転させ、資産価格の上昇抑制に向けた政策対応を示した。しかし、足元では依然として金利水準は低く、利上げによる景気への影響は限定的であろう。実質預金金利もマイナス金利状態であり、株式市場への資金流入期待は根強い。ただ、今後、国際商品市況の上昇や人件費の上昇などから、インフレ圧力の強まりが続く場合、追加的な利上げの必要性も残る。その場合も、本格的な金融引き締め政策への転換とはならず、内外の金融・経済情勢に対応する形で柔軟な金融政策を図ると見られる。

  景気動向では、国慶節連休(10月1〜7日)の小売・飲食業の売上高が前年同期比18.7%増となるなど、伸び率は前年同期から0.7pt上昇したことから、10月の小売売上高も拡大基調が継続する見通し。さらに、製造業購買担当者景気指数(PMI)も反転しており、企業の生産活動も拡大基調となっている。今後は、賃金の上昇などを背景に個人消費の堅調な拡大が続き、固定資産投資も政府のインフラ投資追加により再び拡大ペースを速めるとみられ、内需を中心に拡大基調が続くだろう。このことから、今回の利上げは先行きの強い経済への自信の表れと捉えることもできよう。

(アジア部 星)

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