9日の香港株式市場は反落。ハンセン指数の終値は前日比309.27pt(1.06%)安の28,698.80ptだった。同日発表の中国の物価指標が良好な結果となり、このところくすぶり続けている中国当局が金融や不動産市場の引き締めに動くとの警戒感が一段と強まった。米商務省が中国のスーパーコンピューター関連の企業や団体に対する禁輸措置を発動すると発表し、米中対立の激化も再び懸念された。香港メーンボードの売買代金は1417億香港ドルと、前日から大幅に減少。中国本土から香港株に投資するストックコネクト・サウスバウンド取引は、成約ベースで14億6000万香港ドルの買い越しだった。
9日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続伸し、前日比297ドル03セント(0.9%)高の33,800ドル60セントと5日以来となる過去最高値を更新した。米経済活動の正常化への期待や緩和的な金融政策の長期化観測から、景気敏感株を中心に買いが優勢だった。ナスダック総合株価指数は続伸し、前日比70.875pt(0.5%)高の13,900.185ptと2月中旬以来の高値を付け、多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数は3日続伸し、31.63pt(0.8%)高の4,128.80ptと連日で過去最高値を付けた。
週明け12日の香港株式市場でハンセン指数は反発か。前週末の米株式相場の上昇を追い風に、香港市場でも買いが先行しよう。本日は電子商取引(EC)大手のアリババ集団(09988)の動きに注目が集まりそうだ。中国の規制当局は10日、アリババ集団(09988)に対して182億2800万元(約3000億円)の独占禁止法違反による罰金処分を科す決定を出した。罰金額は2015年に半導体大手の米クアルコムの60.88億元を超え、過去最大となった。ただ、過去最大の罰金はすでに報道されており、株価には概ね織り込んだと考える。同法違反による罰金額は法規で最大売上高の10%と定められており(クアルコムの罰金額は売上高の8%)、今回の罰金額は巨額だが、同社売上高の4%にとどまった。また、同社20年3月期の純利益(1492億元)に対しても約12%に当たり、業績に対する影響は限定的とみられる。アリババは「今回の罰則を誠実に受け入れ、従うほか、法令順守体制の構築を一層強化し、イノベーション発展に基づき、企業の社会的責任を果たしていく」と表明した。同社の株価が悪材料出尽くしの動きとなれば、他のIT銘柄への波及効果も期待できそうだ。
(マーケット支援部 井上)
方向感を探る展開か
9日の中国・上海株式相場は反落した。上海総合指数の終値は前日比31.8776pt(0.91%)安の3,450.6772ptだった。朝方発表された3月の卸売物価指数(PPI)と消費者物価指数(CPI)がともに市場予想を上回る改善となったことが、政府が金融政策を引き締め方向にかじを切るとの懸念につながった。不動産市場の投機行為への取り締まりも強化されていることから、当局がバブル防止に躍起になるとの思惑が広がり、高PER(株価収益率)銘柄を中心に幅広い銘柄に売りが優勢となった。酒造株が大幅に下落したほか、新エネルギー関連銘柄に売りが目立った。1~3月期が最終赤字に転落した物流の順豊控股(002352)が急落し、電子機器や半導体などのハイテク関連株、保険や証券株も売られた。半面、鉄鋼や石炭、石油株が上昇。観光関連や小売株に買いが目立った。上海と深圳の売買代金は合計で6946億元と、前日から9%減少した。香港から中国本土株に投資するストックコネクト・ノースバウンド取引は、合わせて成約ベースで8億700万元の売り越し。個別では、京東方科技集団(BOEテクノロジー・グループ、000725)、美的集団(ミデア・グループ、000333)、隆基緑能科技(ロンギ・グリーン・エナジー・テクノロジー、601012)が買い越しとなり、宜賓五糧液(ウーリィアンエー・イービン、000858)、貴州茅台酒(グイジョウ・マオタイ、600519)、中国旅遊集団中免(チャイナ・ツーリズム・グループ・デューティー・フリー、601888)などが売り越しとなった。
12日の中国本土市場は方向感を探る展開を想定。週末16日に中国1~3月期GDPの発表を控え、景気回復期待が強まる一方で中国当局による金融引き締め懸念が上値抑制要因として意識される流れが続きそうだ。上海総合指数、深セン成分指数ともに25日移動平均線を維持できるかがポイントになりそうだ。
(マーケット支援部 井上)