8日の香港株式相場は反発。ハンセン指数の終値は前日比333.27pt(1.16%)高の29,008.07ptだった。3月18日以来約3週間ぶりの高値を付け、心理的節目の29,000pt台を回復した。新型コロナウイルスワクチンの普及などで世界景気の回復期待が高まり、投資家が運用リスクをとる姿勢を強めた。金融株の一角が買われ、相場をけん引した。ハイテク関連銘柄で構成するハンセンテック指数は小反発し、前日比0.07%高。商いは活況で、香港メーンボードの売買代金は2811億香港ドルと、前日から約64%増えた。大株主による保有株の一部売却が発表された中国ネットサービスの騰訊控股(テンセント、00700)が1銘柄で1400億香港ドルを超える売買を記録した。中国本土から香港株に投資するストックコネクト・サウスバウンド取引は、成約ベースで47.29億香港ドルの買い越しだった。
8日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比57ドル31セント(0.2%)高の33,503ドル57セントで取引を終えた。米長期金利の低下で相対的な割高感が和らぎ、ハイテク株に買いが入った。米連邦準備理事会(FRB)による金融緩和の長期化観測も買いを後押しした。米長期金利は一時、前日比0.05%低い(債券価格は高い)1.62%に低下。金利上昇時に割高感が意識されやすい高PER(株価収益率)のハイテク株に買いが入り、ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は3日ぶりに反発し、前日比140.468pt(1.0%)高の13,829.310ptで終えた。
9日の香港株式市場でハンセン指数はもみ合いか。前日の米株式相場が長期金利の低下を背景に上昇しており、香港市場でも運用リスクをとる動きが先行しよう。一方で、米中対立懸念が上値抑制要因として意識されそうだ。米商務省は8日、中国でスーパーコンピューターの開発を手掛ける企業や研究機関など7社・団体に事実上の禁輸措置を発動すると発表した。中国のEV用半導体国産化の動きも伝わっており、マーケットは今後両国の戦略を見極めながら好悪材料を織り込む流れと思われるものの、今回の制裁措置はバイデン政権として初めてであることから、投資家心理に幾分かの影響を与えよう。本日は、日本時間10:30に3月の中国物価統計が発表される予定。市場では消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)ともに、前月以上の伸びが見込まれている。中国当局の金融政策の方向性を見極める上でも注目されそうだ。
(マーケット支援部 井上)
方向感に乏しい展開か
8日の中国・上海株式相場は3日ぶりに小反発した。上海総合指数の終値は前日比2.9292pt(0.08%)高の3,482.5548ptだった。世界での新型コロナウイルスワクチンの普及などを背景に、中国内外の景気回復期待が強まった。金属株に買いが入り、指数を支えた。もっとも、中国国内景気が回復するなかで中国政府が金融や不動産の引き締め姿勢を強めるとの警戒はくすぶった。不動産株や大手銀行株が売られ、公益株やインフラ関連も安かった。上海・深セン両市場を合わせた売買代金は7672億元。香港から中国本土株に投資するストックコネクト・ノースバウンド取引は、合わせて成約ベースで17.03億元の売り越しだった。個別では、宜賓五糧液(ウーリィアンエー・イービン、000858)、美的集団(ミデア・グループ、000333)、内蒙古伊利実業集団(インナー・モンゴリア・イーリー・インダストリアル、600887)、隆基緑能科技(ロンギ・グリーン・エナジー・テクノロジー、601012)などが買い越しとなり、貴州茅台酒(グイジョウ・マオタイ、600519)、京東方科技集団(BOEテクノロジー・グループ、000725)、中国旅遊集団中免(チャイナ・ツーリズム・グループ・デューティー・フリー、601888)などが売り越しとなった。
9日の中国本土市場は方向感に乏しい展開か。全体的に積極的な買い材料が乏しい中、個別銘柄の選別物色中心の動きとなりそうだ。
(マーケット支援部 井上)