政府は今年後半の経済政策の重点を消費に置くようだ。新たな景気刺激策は望み薄だが、米利下げ期待から香港市場は確り、本土市場も中国の利下げが視野に入ってくれば持ち直し基調に入ろう。
8月1~23日の香港ハンセン指数は+1.5%、上海総合指数は-2.9%。ハンセン指数の上昇率は米国S&P500種指数の+2.0%には及ばなかったものの、日経平均の-1.9%を大きく上回った。香港市場は割安感と米利下げ期待等から確りの展開。一方、本土市場は外国人投資家の売りもあり軟調。海外投資家のストックコネクト経由の本土市場株日次売買動向の発表が8月19日からに停止され、外国人投資家は中国政府の対応を嫌気したようだ。
7月の経済指標は小売売上高を除き、伸び率は概ね5月よりも鈍化。その小売売上高も前年同月比+2.7%と低い伸びに留まった。新築住宅販売金額は前年同月比-15.7%と、6月から3.5%ptマイナス幅が広がった。しかし、1~2月には-34.7%だったことを考えると、5月に発表された住宅販売促進策の効果は継続しているといえよう。
また、一部の地方政府は追加の住宅販売促進策を採用し、更には、特別債の発行による住宅在庫の購入も検討されている。新築住宅販売は資金難に悩む不動産会社の収入源であるため、下げ止まれば景気下押し圧力も緩和されよう。
7月30日の中央政治局会議では下半期の政策方針を決定。今年の経済社会発展目標を確実に達成することを目標に、①消費を内需拡大の重点分野にすること、②既に決定した政策を速やかに実施すること、③設備更新や耐久消費財の買い替え促進策の強化、などが政策として盛り込まれた。
特に、消費は重点分野であることから、中央政治局会議が開催される前の7月25日には自動車、家具、設備の買い替え促進策に対する資金を3,000億元上乗せすることが発表された。また、8月5日には「サービス消費の高品質の発展促進に関する意見」が発表され、政府が重視する商品分野等が示された。
ただし、米大統領選挙でトランプ氏が次期大統領に就任した場合、中国製品に対する関税を60%以上に引き上げることが検討されている。来年以降の景気下押し圧力が高まることも考えられ、中国政府は積極的な財政支出を年内は控えよう。このため、年後半は緩やかな減速が続くと見込まれる。
米利下げ期待で香港市場は復活か
8月23日にパウエル米FRB議長がジャクソンホール会議で「利下げの時が来た」と発言。これにより9月18日の米利下げはほぼ確定したとみられる。香港は米ドルに対する固定相場制を採用しているため、米金利が低下すれば香港でも市場金利が低下しやすい。これは株価の上昇要因となろう。実際、香港市場は新築住宅販売の底打ちや米利下げ期待等を背景にハンセンボラティリティ指数(20を超えるとリスクが高い)が低下し、株価が既に持ち直し基調に入っている。
一方、本土市場でも米利下げは好材料。米金利が低下すれば人民元対ドルレートが上昇するとみられ、そうなれば人民銀行は資本流出を過度に懸念せずに利下げを実施できよう。本土市場でも株価は持ち直して来ると予想する。
アリババ集団(09988)は8月28日に香港証券取引所でセカンダリー上場からプライマリー上場への切り替えを果たした。プライマリー上場すれば、同社株が早晩ストックコネクト銘柄に採用される公算が高く、中国本土マネーの資金流入が期待できる。香港市場のハイテク代表銘柄の株価が上昇局面に入れば、香港市場の復活を印象付けよう。