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今月の特集記事【特集1】規制懸念が後退、下期の業績回復に期待 ~ネット大手を買い戻す動きが顕著~

中国当局による「プラットフォーム経済」への支持表明を受け、ネット大手への規制圧力は既に峠を超えたとの認識が広がっている。規制懸念が大きく後退したことや業績に対する市場の好意的な反応などを背景に、ネット大手を買い戻す動きが活発化した。「セカンダリー上場銘柄のストックコネクト対象銘柄への追加」にも進展が見られた。実現すれば、ネット関連株には支持材料となりそうだ。

当局のスタンスは「健全な発展の促進」に転換

プラットフォーム経済への支持表明を巡る動き

中国当局の重要な会議で、「プラットフォーム経済の健全な発展の促進」が相次ぎ表明されている。中国当局はプラットフォーム経済に対するスタンスは「問題点を正す」段階から「健全な発展を促進する」段階に移行しつつあると見られる。市場ではネット規制は既に峠を越えたと認識されつつあり、規制に対する懸念は大きく後退している。進行中の法改正などはまだあるが、独占禁止法の改正案は6月24日に可決された。規制の不透明感は和らいだとの声が多くなっているようだ。

中国当局は今年1月、「第14次五カ年(21~25年)デジタル経済発展計画」を発表し、「デジタル経済の中核産業がGDPに占める割合を20年の7.8%から25年の10%に高める」目標を掲げた。テンセント(00700)やアリババ集団(09988)などプラットフォーマーは、消費者向けサービスでデジタル化のけん引役を担ってきたほか、クラウドへの投資拡大などで企業・政府機関のDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進も積極的に行っているため、今後もデジタル経済における高い存在感は変わらないと見られている。

1~3月期は業績悪化、下期の業績回復に期待

主要ネット企業の1~3月期業績

長引く規制圧力や景気低迷などを背景に、中国のネット大手各社の業績は悪化している。22年1~3月期は赤字決算が目立った。投資先の企業価値の下落に伴う投資損失計上が主因だ。個別銘柄では、テンセントの業績は市場予想を下回った半面、京東集団(09618)や百度集団(09888)などその他ネット大手の多くの業績は総じて市場予想を上回った。ネット大手各社は引き続き成長投資に注力しているほか、「選択と集中」や「マネタイズ(収益化)」など収益性を重視する動きも見られている。百度集団傘下の動画サイト大手、愛奇芸(アイチーイー)は減収となったが、Non-GAAPベースの営業損益は四半期ベースで初の黒字を計上した。

多くのネット企業に収益性を重視する動きが見られる。前年同期の業績鈍化の反動もあるので、22年下期の業績回復に期待したい。

ハンセンテック指数の買戻しの動きが活発化

ハンセンテック指数とナスダック総合指数の推移

長引くネット規制圧力、景気低迷や米上場の中国企業の上場廃止懸念などを背景に、ハンセンテック指数は22年3月に3,463.44ptを付け、21年2月の高値11,001.78ptから「半値八掛け二割引」(3,520pt)以下の水準まで大きく下落した。その後、中国当局によるプラットフォーム経済への支持表明などが好感され、ネット企業を買い戻す動きが活発化している。同指数は5月10日の直近安値(3,755.89pt)から6月24日までに29%上昇と急反発した。需給面では、サウスバウンド(中国本土⇒香港)経由で持続的な資金流入が見られているほか、「中国株に強気」を示す外資系金融機関が増えており、海外勢も香港株へのエクスポージャーを拡大していると推測される。一方、米国市場では、米FRBの金融引き締め加速への警戒感を背景に、ナスダック総合指数は下落基調にあり、両指数は「ワニの口」が開く動きを示している。

セカンダリー上場銘柄に資金流入期待

美団と小米集団がストックコネクト対象追加前後の株価指数

香港政府の陳茂波(ポール・チャン)財政長官は6月、メディアのインタビューで「香港のセカンダリー上場銘柄のストックコネクト(滬港通・深港通)対象追加について、中国本土の証券当局に強く求めている」と言及。香港証券取引所(00388)の元CEO、李小加氏は20年、セカンダリー上場した銘柄のストックコネクト対象追加について、「時間の問題」との認識を示していた。今回香港政府は本格的に動き出したとみられ、近い将来実現する可能性が高いと考えられる。

テンセントや美団などテック銘柄は中国本土投資家に人気が高く、サウスバウンドの売買代金上位の常連となっている。6月24日時点、ストックコネクト経由で2社の保有時価総額は、それぞれ4兆円、2兆円を超えている。今後、セカンダリー上場銘柄がストックコネクトの対象に加われば、京東集団、百度集団やアリババ集団などには巨額なニューマネーの流入が期待されよう。

加重投票権(WVR)構造を持つ美団(03690)と小米集団(01810)は19年10月28日にストックコネクトの対象に追加された。その前後半年間の株価の動きを見ると、ハンセン指数はほぼ横這いだったが、美団と小米集団は各々5割強、4割弱上昇している。ニューマネー流入の効果があったと思われる。

(東洋証券亜洲有限公司 キョウ)

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