新型コロナで消費がやや冷え込む中、企業への影響はセクター別でまちまちだ。ネット分野や生活必需品を手掛ける企業はニーズをうまく捉え、業績も好調だった。消費と企業の直近動向をまとめてみる。
必需品は堅調な伸び、不要不急の品は避ける傾向
まずは足元の消費の動きを見てみよう。中国の社会消費品小売総額は足元で前年割れ(1~7月期は前年同期比9.9%減)。ただ、マイナス幅は徐々に縮小しており、通年でのプラス成長に期待が高まる。
品目別では安定的に伸びている分野もある。例えば「食糧・油」「飲料」「医薬品」などの生活必需品はコロナ禍でもプラス成長を保った。直近では、「化粧品」が増加に転じたほか、「スポーツ・エンタメ用品」「通信機器」も前年同期比でプラス成長となっている。一方、「服装・靴・帽子・紡績品」などアパレル関連は2桁のマイナス成長が続いており、「家電・オーディオ機器」「家具」もさえない。不要不急の品は買い控えている傾向がデータからもはっきりと読み取れる。これらの分野が回復してくれば消費全体にも勢いが戻ってくると思われる。
生活様式の変化で企業業績はやや明暗
この消費の動きを念頭に企業業績をチェックしたい。ここでは、当社カバレッジ銘柄を中心に上場企業の20年6月中間期決算を下表にまとめた(8/25発表分まで)。全体的にはネットや内需関連株の業績が比較的安定していることがうかがえる。
ニューエコノミー分野では、フードデリバリー部門が影響を受けた美団点評(メイトゥアン、03690)以外は業績に大きなブレは見られなかった。ネット通販や各種スマホビジネスなどの事業は安定的に推移している。特に、京東集団(JDドットコム、09618)は6月中間期で前年同期比120.7%増益。創業記念セール「618」も好調で、通販需要を取り込んだ。
電子・ハイテクでは、立訊精密工業(ラックスシェア、002475)と歌爾(ゴーテック、002241)が「AirPods」需要の増加を受けて大幅増益を達成。1~9月期でも、前者は40~60%増益見通し、後者は70~90%増益見通しを発表しており、"高度成長"はまだまだ続きそうだ。大族激光科技産業集団(ハンズレーザー、002008)は、プリント配線基板(PCB)部門の受注増やマスク自動生産ラインの立ち上げなどが奏功し、19年12月期の大幅減益から一転、大幅増益となった。金山軟件(キングソフト、03888)は黒字転換。「巣ごもり消費」の拡大やテレワークの普及などがオンラインゲームやオフィスソフト・サービス部門を後押しした。半導体のSMIC(00981)は4~6月期で同644.2%増益を達成した。
食品関連では、白酒は堅調に推移したものの、ビール需要の伸び悩みが関連株の業績を押し下げた。ただ、バドワイザーAPAC(01876)は、中国市場での6月販売量が単月ベースで過去最高になったと発表。外食や家飲み需要の回復がうかがわれる。
内需・消費全般を見ると、根強いインフラ需要を受け建機の中聯重科(01157)が同55.7%増益と好調だったほか、江蘇恒瑞医薬(600276)など医薬株も堅調だった。外食や小売りなど実店舗を中心に展開する企業は、年前半の移動制限などが響き業績も不振だった。ただ、大型スーパーを展開する高キン零售(サンアート、06808)は増収増益と好調。ネット注文のニーズ拡大などが追い風になったと見られる。
(上海駐在員事務所 奥山)