新型コロナ禍の中で、上場企業の明暗が分かれている。20年1~3月期決算では、家電や自動車、ハイテクセクターの一部で減益銘柄が目立つ一方、小売や白酒、医薬など日常生活に比較的近い分野は堅調だ。
軒並み不振の中で増益確保銘柄は?
当社カバレッジ銘柄を中心に、主要セクターの上場企業の19年通期及び20年1~3月期決算をまとめた(主に四半期決算が義務化されているA株銘柄)。
20年1~3月期決算を見ると、貴州茅台酒や宜賓五糧液などの白酒関連銘柄が増収増益ペースを確保した。1月の春節(旧正月)前後の書き入れ時に当たったこともあるが、根強い需要は不変のようだ。
消費全般も右肩上がり。スーパー運営の永輝超市は前年同期比で3割超の増収増益。生活必需品のニーズをうまく取り込んだ形だ。四川省を中心にチェーン展開する同業の成都紅旗連鎖も同80.7%増益と好調。順豊HDは同28.2%減益だったが、減損などの一時的損益を除くと同0.5%減益にとどまる。
電子・ハイテクは明暗が分かれた。「AirPods」需要などを背景に、立訊精密工業は同59.4%増益、歌爾は同44.7%増益といずれも好調。半導体ファウンドリーで中国最大手のSMICは同422.8%増益。一方、AACテクノロジーズや大族激光科技産業集団(ハンズレーザー)は大幅減益で、科大訊飛(アイフライテック)、啓明星辰信息技術集団(ヴィーナステック)、用友網絡科技は赤字を計上した。
家電と自動車は冴えない。消費意欲の後退と営業機会の損失などの影響をまともに受けた形だ。72.5%減益となった珠海格力電器は、董明珠董事長が今年2月の売り上げが「ほぼゼロ」だったとしている。移動制限に伴い、据え付けなどの設置サービスも停滞した。自動車各社の減益幅は、最大手の上海汽車集団が86.4%、BYDが85.0%、広州汽車集団が95.7%だった。
ここからは注目セクターと銘柄の動向を紹介する。
【食品・飲料・酒類】相次ぐ高値更新銘柄
醤油などを製造する仏山市海天調味食品の20年1~3月期決算は増収増益と好調だった。同社株価は3月中旬以降に大きく上昇。3月31日に初めて100元台に乗せ、その後も上値追いの展開となった。貴州茅台酒と宜賓五糧液も同じように買い優勢で、上場来高値の更新が続く。一方、同じ酒類でも青島ビールは同四半期で2桁の減収減益となった。白酒は収集価値や希少性などが価格や業績を後押ししやすいが、ビールは実需に基づくもの。コロナ禍でのニーズ減の影響を大きく受けたようだ。内蒙古伊利実業集団と光明乳業はいずれも5割近い減益だった。コロナ禍の混乱による牛乳の販売不振と高級製品の贈答需要減退などが要因とされるが、今後は社会・経済活動の正常化と共に販売も戻ってくることが期待される。
【建機】足元販売が好調で株価右肩上がり
パワーショベルで中国最大手の三一重工の20年1~3月期決算は前年同期比18.9%減収31.9%減益と不振だった。同業の徐工集団も同41.9%減益。新型コロナの感染拡大による各種建設工事の遅滞で建機販売に影響が出たことが主因のようだ。ただ、足元ではパワーショベル販売が回復中。20年3月の主要メーカーの販売台数は前年同月比11.6%増の4万9408台で、単月ベースでは過去最高。4月も同59.9%増の4万5426台と高水準だった。コンクリート機械やクレーン大手の中聯重科は「4~6月期の販売は力強く増加する」としており、建機業界全体の押し上げ効果が期待できよう。中国政府は景気下支えのため積極的なインフラ投資を行うと見られ、中長期的な恩恵も受けそうだ。
【電子・ハイテク】"コロナ後"を先取りしたマネーの動き
次世代産業分野で先を見越した動きが目立つ。用友網絡科技の株価は一時、19年末比で8割以上上昇。20年1~3月期は販売不振とコスト増、投資収益の減少などで赤字に転落したが、クラウド事業の成長性をにらんだ投資マネーが入っているようだ。株価が概ね右肩上がりの金山軟件にも同じことが言える。SMICは同四半期で35.3%増収422.8%増益と好調。売上高は四半期ベースでの過去最高を更新した。4~6月期は前四半期比3~5%増収、粗利益率は26~28%(1~3月期は25.8%)と見込んでおり、半導体市場の需要回復を反映していきそうだ。好業績と言えば立訊精密工業。6月中間期で40~60%の増益見通しを発表済みで、株価も騰勢を取り戻している。
(上海駐在員事務所 奥山)