2015年3月5日から15日まで開催された中国の全国人民代表大会(全人代)を通じて、今年の経済成長率目標は7%前後と設定された。「新常態(ニューノーマル)」という新たな経済発展方針の下、成長至上主義からの脱却や構造改革を進め、持続可能な安定成長へのシフトチェンジを目指す。また、「一帯一路」に代表される海外インフラ事業の強化や環境問題の改善などに積極的に取り組むことも決定した。
金融改革や国有企業改革が柱
李克強首相は全人代の冒頭で行った「政府活動報告」で、今年のGDP成長率目標を7%前後と設定した。05~11年までの8%、12~14年までの7.5%という目標を一段と引き下げた形だ。成長至上主義からの脱却を鮮明にして「量から質へ」という成長方式の転換を進める一方、雇用確保のための安定成長は維持する。都市部新規就業者数は1000万人以上と設定。また、消費者物価の上昇率は3%前後に抑え、輸出入の伸びは6%前後を目指すとした。
15年の経済活動の目標としては、預金保険制度の導入や金利自由化の推進を柱とする金融改革、国有企業改革、「一帯一路」を核とする海外インフラ事業の強化、観光・レジャーや教育・文化・スポーツなど消費分野の育成、産業構造の高度化、インターネット産業の後押しなどが掲げられた。深刻化する環境汚染問題については、GDP 1 単位当たりの二酸化炭素排出量を3.1%以上削減するなどの具体的な目標が掲げられた。同時に、風力発電、太陽光発電、バイオマスエネルギー、水力発電、原子力発電など次世代エネルギーの発展も盛り込まれた。
証券分野で注目されるのは、「深港通(深センと香港の株式取引の相互乗り入れ)」への言及があったことだろう。李首相は、時期は明言しなかったものの、同システムの「テスト作業を適時スタートさせる」とした。市場では15年後半の実施が有望視されており、実現すれば昨年11月の「滬港通」に続く証券業界のビッグイベントになるだろう。海外投資資金の流入が中国証券市場の流動性を高め、マーケットの魅力を増していくことが考えられる。
2015年全人代を経て注目されそうなテーマ及び関連銘柄
(投資調査部 奥山)