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中国からの便り

第206回:精神論で乗り越えろ?不毛な競争「内巻」のリアル

「『内巻(ネイチュアン)』に巻き込まれないように就職先を国有企業にしたのに、今では"巻王"になっている」――。国有建築大手で働く知人が暗い顔でつぶやいた。中国の流行語にもなった「内巻」。これは「不条理な内部競争」を指す。「巻王」はそのトップなので、「社内の不毛な競争の勝ち組」とでも言えよう。

中国では国有企業は"鉄飯碗"(食べることには困らない)と例えられる。地位が安定していて仕事はラク、福利厚生も悪くない。入社できれば一生安泰とされ、競争が激しい民間企業とは正反対。ただ、その生ぬるい環境はここに来て変わり始めているようだ。

国有の通信キャリア大手で働く別の知人も「残業代が出ないのは当たり前。日付が変わる午前0時前に退社できれば早帰りだ」とグチる。「働いた分、ボーナスも期待できるのでは」と慰めてみたところ、「結果に結びつかない精神論が中心の会議や中身のない競争が増えただけ。こんな会社が成長するわけない」と返された。

彼を特に悩ませているのは週末に開かれる部門会議だという。形式上は自由参加だが、ほとんどのメンバーが出てくる。休日出勤手当は皆無。上司から評価されるのは成果ではなく、休日にも働く精神。そのため安易には休めない。

この風潮は普段の仕事にも影響を及ぼしている。効率良く業務を終わらせて早めに退社するという当たり前の行為は、上司からやる気が足りないと喝を入れられることもある。職場の正義は長時間労働。成果は二の次になっている。仕事のスピードをわざと緩め、誰が一番遅く退社するかという我慢大会(チキンレース)が毎日繰り広げられているようだ。会社で寝泊まりする同僚が現れた時は彼もさすがに出世を諦めたそうだ。大きな期待は、政府が掲げる国有企業改革に伴い、無意味な競争が効率重視の方向にシフトしていくこと。ただ、この改革が成功するまでは、人員削減の対象にならないように精神論で勝ち抜く。彼は覚悟を決めている。

教育現場でも競争が激しさを増している。重慶市の公立中学校で教師を勤める知人は「1日48時間があっても全然足りない」とこぼす。中国の教員は、夏休みや冬休みなどの長期休暇が与えられるのはもちろん、生徒の両親からの「心付け」("袖の下"のようなもので、副収入につながる)もよくあり、ある意味"オイシイ"職とされてきた。ところが状況は一変。今では通常業務をこなしながら夏季・冬季休暇の課題作成に勤しみ、休日も無償で学習サポートを名乗り出る。

進学率を上げるための涙ぐましい献身ぶりだが、学校側が高く評価するのは、中身は別にして"モーレツ教師"という姿勢そのものらしい。受験大国の中国ではこのような動きが大歓迎される。教師側から見れば、献身的な態度を示すことが給料アップに直結するとは限らないが、少なくともリストラされる可能性は低くなるという。なんとも後ろ向きな考え方だが、知人は「意地でも今の職を手放したくない。エンジン全開で勝ち抜く」と言う。その気迫に思わず圧倒されてしまう。

ゼロコロナ政策のダメージが残る中国経済。23年度の大学新卒者は過去最多の1158万人に達する見通しだが、就職難も大きな社会問題として取り沙汰されている。安定を求める若者は公務員を目指す傾向にあり、今年1月の国家公務員試験では一部職種の倍率が6000倍にも達した。国有企業の人気もじわり上昇中で、ライバルが増えると戦々恐々の中堅・ベテラン社員も少なくないそうだ。不毛な競争に疲れ、リストラに怯える社員。全てがそうではないだろうが、国有企業の意外な側面も垣間見られる。

冒頭の建築大手で働く彼は"勝者"になるべく、今後1年間の週末フル出勤を決意した。クレイジーな考えだが、勝ち抜く、いや生き抜くためにはこのような気合いと根性も不可欠なのだろう。結局は「質より量」というのが現状だ。ただ、これからは効率やクオリティーを重視する社会になることを期待したい。彼らの精神力を有効に使えば、国有企業もとてつもない成長を遂げる......だろうから。

(東洋証券上海駐在員事務所 山藤 秋男)

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