中国株市場で国有企業銘柄がにわかに注目されている。キーワードは「中字頭」。景気回復のペース鈍化を受け、高利回りや割安感などが特徴のディフェンシブ株が見直され始めた。
中国石油天然気(ペトロチャイナ、00857)が50%高、中国移動(00941)が26.5%高、中国銀行(03988)が13.6%高――。マーケットでは、社名に「中国」を冠したいわゆる「中字頭」銘柄の買いが目立っている。この数字は年初来の株価騰落率(∼5/19まで)。A株銘柄でも、中国西電電気(601179)が21.1%上昇、中国建築(601668)が12.6%上昇している。一方、同じ期間中、上海総合指数は5.4%の上昇にとどまり、ハンセン指数は3.5%下落していた。
中国の経済指標は足元でやや息切れ感もある。2023年4月の中国の小売売上高は前年同月比18.4%増。昨年4月は上海ロックダウンなどの影響で同11.1%減だったため、その反動で大きく伸びたが、市場予想の21.9%増は下回った。消費者物価指数(CPI)は同0.1%上昇(市場予想は同0.3%上昇)にとどまり、一部ではデフレ懸念も出ている。
この中でにわかに脚光を浴びるのが国有企業株だ。情報ベンダーの同花順が算出する「中字頭」指数(A株銘柄で構成)は昨年後半から徐々に上向きになり、騰勢を強めている。コロナ禍の中ではデジタル経済やスマート社会などが注目され、新興企業株が多い深セン市場が賑わったが、ここに来てハイテクやAI、ITセクターの買いが一巡し、投資資金がディフェンシブセクターに回帰しつつあるとも見られる。
国有企業は政府がバックについており、安定した事業環境の下、各社ともファンダメンタルズが良好と言える。また、「比較的高い配当利回り」「安定した業績」に加え、「割安なバリュエーション」を示す銘柄が多い。
これらの銘柄が買い進まれている背景には経済の先行き不安もありそうだ。ポジティブな言い方をすれば「困ったときの国有企業株」。この傾向が長期間続くとは限らないが、投資資金の流れの一つとして注目しておきたい。
(上海駐在員事務所 奥山)