マイクロンの調査も追い風に
中国株式市場で半導体セクターが注目されている。今年3月の全国人民代表大会(全人代)を通じてハイテク分野の自立自強方針が改めて示されたことに加え、同月下旬には中国当局が米マイクロン・テクノロジーの製品に対して調査を開始し、業界の国産化に追い風という思惑買いも広がったようだ。関連株の年初来上昇率(~4/17)は、ファウンドリーのSMIC(00981)が46.6%、製造装置の北方華創科技集団(ナウラ・テクノロジー、002371)が42.8%、ファブレスメーカーの兆易創新科技集団(ギガデバイス、603986)が31.7%といずれも主要指数のパフォーマンスを上回っている。
半導体自給率では出遅れ感
一方、米国・日本・オランダが中心となった対中半導体規制が強まっているのも事実だ。目的は、先端技術(ロジックICの場合は16/14nm以下など)の軍事転用阻止。製品に加え製造装置や半導体人材も規制対象となり、中国は「四面楚歌」とも言える状況である。
中国の半導体自給率の向上は道半ばだ。代表格のDRAMやNAND型フラッシュメモリーは数%程度にとどまり、IC(集積回路)全体では中国資本系企業は6.6%。製造設備は13%前後で、露光装置に限ると1.1%とされる。
この現状に鑑み、中国は製品及び設備の国産化率向上に一層注力し、同時に既存及び成熟プロセスの強化を図っているようだ。SMICは生産設備や部品、材料の入手困難を見越し、2020年頃に「先端プロセスの開発から成熟プロセスの充実」へと転換していたフシがある。ギガデバイスが手掛けるNOR型フラッシュメモリーは成熟技術の55nm製造プロセスでの量産が主力。ナウラは業界の国産化の動きが追い風になったと見られ、22年12月期は前年比51.7%増収118.4%増益(速報ベース)、23年1~3月期は最大で前年同期比87.3%増収200.3%増益見通しと好調だ。市場では「国産化率向上」と「既存プロセスの活用」が材料視されている。
中長期的な物色に期待
直近の半導体株の物色は、リオープン(経済再開)に続く格好の投資テーマとして注目された側面もある。急上昇の反動から短期的には利益確定売りが入る可能性もあろうが、国産化自体は息の長いキーワード。中長期の投資対象として強気スタンスを維持したい。
(上海駐在員事務所 奥山)