人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる「人的資本経営」への関心が、今後さらに高まることになりそうだ。
海外では以前から人的資本情報の開示に向けた動きがあり、その傾向は継続しているという。人的資本に関連する情報は重要な投資の判断材料であると思われ、人材投資に積極的に取り組んでいる企業の評価はより高まることになりそうだ。
8/25に「人的資本経営コンソーシアム」の設立総会が開催された。経済産業省・金融庁がオブザーバーとなり、事例共有のほか、企業間の協力に向けた議論や効果的な情報開示の検討などを進める方針。
また、8/30には内閣官房に設置されている新しい資本主義実現会議の非財務情報可視化研究会が「人的資本可視化指針」を公表。
企業に開示を推奨する事項の例として、「リーダーシップ」や「スキル・経験」、「採用」、「ダイバーシティ」など7分野19項目が示された。
この流れは2021 年6 月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードに、「人的資本への投資について、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ具体的に情報を開示するべきであること」等が記載されたことに沿うものとも言えよう。
残念ながら、日本の人材競争力は低いと言わざるを得ない。国際経営開発研究所(IMD)の世界人材力ランキングで日本は39位。世界経済フォーラム(WEF)の世界競争力報告では日本は総合6位ではあるものの、労働ダイバーシティ、外国人採用、クリティカルシンキングなどの項目で低位となっている。
人への投資は、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」の実現に向けた重点投資分野のひとつでもあり、日本企業の奮起が期待されよう。人が持つ知識や技能を価値創出の源泉となる資本として捉え、人材の価値を最大限に高めることは、中長期的な企業価値の向上に寄与するものになると考える。
(投資情報部 大塚)