9/2に国連食糧農業機関より発表された8月の食料価格指数は138.0だった。159.7と最高値を付けた2022年3月よりも下落しているとはいえ、依然として高水準で推移している。
新型コロナウイルスの感染拡大によるサプライチェーンの混乱や、ロシアによるウクライナ侵攻等による食料価格の急騰は、新興国に食糧危機をもたらす等、世界的に食料安全保障のリスクを改めて認識させた。
農林水産省発表の令和3年度における日本の食料自給率は、前年度よりも1pt高い38%(カロリーベース)だった。日本は食料を自国生産では賄いきれず、多くを輸入に頼っている。豊かな海洋資源に囲まれる日本ではあるが、魚介類の食料自給率は53%(同)に留まる。
牛や豚等の畜産物にいたっては、輸入飼料部分を除いた食料自給率は16%(同)と非常に低い。生産に必要な飼料自給率も25%と生産も供給も大半を外国に頼る状況となっており、食料安全保障は日本にとって大きな問題と言えよう。
食料安全保障等様々な食の問題の解決のため、「フードテック」が注目されている。
「フードテック」とは、テクノロジーを利用して、食の問題の解決や食の持つ可能性の拡大等を目指す概念・サービス等の総称である。
日本の食卓になじみの深いサーモンは多くを輸入に頼っている。農林水産省は令和4年度の水産施策において、サーモンの国産品の拡大の推進を掲げている。その生産方法で注目を集めるのがフードテックの一つ、陸上養殖である。
陸上養殖は海面生け簀養殖と比べ、生産性が高く、様々な魚種の養殖が可能で環境負荷も軽減できる等の利点がある。
世界的に需要増が見込まれるが、養殖に地理的制限があるサーモンをサステナブルかつ安定的に供給できる陸上養殖に商社等が取り組みを始めている。丸紅(8002)はノルウェーの企業と契約し、2024年から販売予定。三井物(8031)はベンチャー企業に出資、「おかそだち」というブランドで既に販売している。
「フードテック」は他にも代替肉等の代替食品や、農業にテクノロジーを取り入れたスマート農業等がある。
世界の飲食料市場は2030年の市場規模が2015年の約1.5倍の1360兆円になると農林水産省が推計する成長市場である。
10/16は国連が定めた世界の食料問題を考える「世界食料デー」である。改めて食料問題を考える良い機会かもしれない。
(投資情報部 佐藤)