逆風知らずの新エネ車
中国で新エネルギー車の販売が伸びている。景気減速や上海ロックダウンなどの逆風もどこ吹く風。足元では前年比2倍以上のペースで増加しており、自動車業界の勝ち組だ。
農村部で購入後押し、補助金政策も継続?
2022年5月の新エネ車販売は前年同月比106%増の44万7000台となった。自動車市場全体は同12.5%減だったので、EVなどの新エネ車がほぼ一人勝ち状態。1~5月までの累計でも前年同期比110.8%増と早いペースで売り上げを伸ばしている。20年は136万7000台、21年は352万1000台だった販売台数は、今年は約42%増の500万台に達すると見込まれる。
中国政府は35年までのガソリン車全廃を目指す。まずは25年時点での新エネ車販売比率を20%に高めることが目標だ。今年1~5月の実績はこれを上回る21%。年後半に伸びがやや減速し、通年では18%程度にとどまる見通しだが、それでも当初予想を上回る勢いと言えよう。
新エネ車の販売好調の背景には、各社の積極的な新車投入、消費者の意識向上などに加え、政策の後押しもある。足元では、中国政府が5月末に農村部での新エネ車の消費喚起策「新能源汽車下郷」を実施すると発表。期間は年内いっぱいで、販売イベント開催や各メーカーの割引キャンペーンを促す。上海市は独自に、純電気自動車(BEV)への買い替えで補助金1万元を支給する奨励策を行う。このほか、全国的に車両取得税の引き下げ(10%⇒5%、条件あり)が年末まで実施される。今年で終了予定だった新エネ車の購入補助金政策が23年以降も継続するとの観測も浮上している。
BYDが市場シェア25%
メーカー別ではBYD(01211)の強さが際立っている。今年1~5月の新エネ車販売台数は前年同期比348.1%増の50万7314台。市場全体が200万3000台なので、ざっくり言えば販売された4台に1台はBYD製となる。同社は3月にガソリン車の生産停止を発表し、4月単月では早くも「新エネ車販売比率100%」を達成した。また、小型EV「宏光MINI」で一世を風靡した上海汽車集団(600104)の販売は同22.3%増と堅調。このほか、吉利汽車控股(00175)は同399.7%増、小鵬汽車(シャオペン、09868)は同122.0%増といずれも大きく増加している。
(上海駐在員事務所 奥山)