昨春より始まったコロナ禍において日常の様々な事象がオンラインにシフトするという事態が進行した。言い換えればIoT社会への移行が高速化し、それに伴い半導体の需要が伸びているのである。
「産業の米」とも比喩される半導体だが、数ある半導体のなかでもより重要な役割を果たすものに、「パワー半導体」がある。
パワー半導体(パワーデバイスとも)とは、電力の制御や変換を行うものであり、大小問わず電力を供給する。そのため、小さな電力で演算や記憶を行う集積回路が「頭脳」と例えられるのに対し、パワー半導体は「筋肉」と例えられている。働きとしては、コンバーター(交流から直流への変換)やインバーター(直流から交流への変換)、周波数変換(交流周期の調整)、レギュレーター(直流電圧の変換)の4つが挙げられ、高い電圧や大きな電流に対しても壊れないよう、通常の半導体とは異なる構造を有していることも特徴。
パワー半導体の活用領域は幅広い。太陽光や風力で発電した電気を無駄なく送電網に送ったり、スマートフォンやエアコン等の様々な家電製品や電気器具に安定した電源を供給するのみならず、EV(電気自動車)や鉄道等、様々な場面で欠かすことの出来ない主役となっている。
デジタル化の加速や車の電装化等の様々な要因を背景に、パワー半導体の市場規模は順調に拡大していくことが想定されている。
一部推計によれば、パワー半導体の世界市場規模は2019年には3兆円に満たなかったが、2030年には4兆円を優に超える規模に成長する(46%程度の成長率)と見通されている。また、材料にSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を使った次世代パワー半導体にも注目が集まっており、今後は自動車含め幅広い領域への本格投入が想定されている。
パワー半導体は相対的に参入障壁が高いとされるが、競争激化は必至だ。各メーカーの対応が注目される。
(マーケット支援部 山本)