新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による打撃は、特に空運業界においても顕著だった。世界的に国境を越えた動きが制限或いは自粛され、観光需要を中心に急激な冷え込みを見せていた。
国内航空大手を例に見ても、2020年度は過去最大級の赤字を計上する見込みであり、過剰となった従業員の整理も含め、経営環境は文字通り視界不良の状態と言っても過言ではなかっただろう。
一方、最悪期を脱しつつある兆候も見られる。ヒントは「ワクチン」と「業績動向」だ。
これまでも国内の移動による需要回復は見られたが、ワクチン接種によってその流れは加速しそうに感じられる。さらに、EUは今夏から米国からの観光客受け入れを(ワクチン接種完了を条件に)開始することを容認する方針と伝わっており、ワクチン接種の進捗が良好なら国際線の需要回復が期待できる。
また、米航空大手3社の最終赤字合計(21.1-3月期)はピークから6割圧縮され、最悪期を脱しつつある旨が示唆された。国内航空に関しては、ANAホールディングスが4/23に従来予想から赤字幅が縮小するとの通期見通しを発表している。ただ、ANAとJALのGW予約率は引き続き損益分岐点を下回っており、そこに緊急事態宣言が発出された為、予断を許さない状況には変わりないだろう。
別の視点から空運業界を見ることも重要だろう。「旅客需要以外」と「再編」がキーワードとなる。
航空機は旅客輸送だけを担うのではなく、貨物等の輸送も担っている。国際物流においては重要な存在だ。一部ではコンテナ不足で海運が目詰まりを起こしている為、航空貨物需要が伸びている模様。
また、4/25にはJALが中国系LCC(格安航空会社)である春秋航空が設立した春秋航空日本を連結子会社化する方針と伝わった。コロナ後の需要を見据えた意図があるようで、業界再編機運が高まる可能性も感じられる。
「明けない夜は無い」と言うが、空運業界にとっても、それは例外ではないだろう。
(マーケット支援部 山本)