「車載半導体不足」問題
足もとで車載半導体の不足が問題となっている。この問題が市場で意識され始めたのは今年に入ってから。きっかけは1/7に判明したとされるホンダの自動車生産調整。車両制御システムに使う半導体を中心に供給が滞っていることが理由と見られる。同様の動きは同社に留まらず、SUBARUやトヨタ、さらには独VW等世界中の自動車メーカーに拡がっている。
なぜ車載半導体不足が起きたのか
車載半導体の不足が問題化した背景として特に指摘されるのが、スマートフォンやパソコン向け、ゲーム向け需要の高まりだ。もともと次世代通信規格5Gに対応したスマートフォンの登場といったような話題もあったが、昨年から続く新型コロナウイルスの影響による外出自粛といったいわゆる巣篭り需要やリモートワーク・テレワークによる需要が旺盛となったことが拍車をかけた格好だ。そのため、そうした領域向けでの半導体不足が昨年秋頃から露わになっていた模様。
更に言えば、自動車市場の世界的な回復も問題の要因として挙げられよう。昨夏以降、中国を端緒として自動車生産が急回復。景気対策や行動変容も相俟って、市場回復が予想以上に早まったとのこと。足もとでEVシフトが本格化している点も、車載半導体不足の背景としては無視できないだろう。
不足問題は一過性か否か
多くの投資家が気にするのが、この車載半導体不足問題は一時的なものか、そうではないのか、ということだろう。結論としては、一時的なものに留まらない可能性が高いと考えている。主な理由は、自動車に内在する内部的要因と外部的要因の2つだ。
内部的要因としては、「CASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)」が挙げられる。こうした自動車産業の新しい領域で技術革新が進み、自動車が今まで以上に電子部品・機器を搭載するようになるということであり、それに応じて必要な半導体が(性能の進化を考慮しなければ)増えるというものだろう。
次に、外部的要因としては、「DX(Digital Transformation)」が挙げられる。単なるデジタル化に留まらず社会全体をデジタル技術で変革する取り組みであり、(性能の進化を考慮しなければ)より多くの半導体が必要不可欠なことは明白だ。また、通信規格も現行の4Gから5G、6Gとより進化していくことが見込まれ、それに対応したデバイスを供給するのにも半導体が必須となる。
足もとでは、拙速に設備投資を強化することのリスクも指摘されているが、生産能力拡大抜きにはこれらの大波には対応できないだろう。車載半導体の不足問題は一過性のものと断ずるのは早計だろう。
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(マーケット支援部 山本)