「あつ森」が現出した任天堂株高
花札から始まり今や世界に名だたるゲーム会社となった任天堂。同社の株価はコロナショック後急速に上昇し、今週には約12年ぶりの高値水準に到達した。
主な背景としては、同社の「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」が世界的な大ヒットとなり、ソフトウェア・ハードウェア販売がともに大きく伸びたことによって、業績拡大期待が高まっていることがある。
「あつ森」がもたらした構造変革
「あつ森」の世界的大ヒットがもたらしたのは単なる任天堂株高だけではなく、社会の構造変化の兆しとも表現できそうだ。
そもそも「あつまれ どうぶつの森」は、従来のシリーズ作とは異なり島の地形を変えることができる等自由度が増していることもあって、今まで以上にプレイヤーの数だけ様々な島が存在することが注目されていた。オンライン上でお互いの島を行き来することも可能だが、そこにコロナ禍に伴う巣篭り需要とオンラインシフトが加わった。
外出自粛が要請されたり、各種イベントが中止・延期される中で、例えば、友達或いは不特定多数の間で誰の島に集まってお花見をしよう、釣り大会をしよう、花火大会をしよう、といったように、現実世界でやりたかったことをオンライン上の「あつ森」世界を通じて体験しようという遊び方が定着するようになったのだ。女性や子供、普段ゲームをしない人でもプレイしやすいという敷居の低さも要因の1つであろう。
さらに紹介すれば、「あつ森」上で結婚式を行う事例や、ファッションショーを行う事例、企業がマーケティング活動を行う事例等も散見されており、「あつ森」がビジネスツールとしても注目されている様が感じ取れる。
ゲームがコミュニケーションインフラに?
「あつ森」の事例から解釈できるのは、「ゲームが新たなコミュニケーションインフラになり得る」ということである。従来のスマートフォンやPCを介したビデオ通話(例えばオンライン飲み等)では、実現可能範囲に大きな制約があるが、ゲームならば様々な場面や状況を再現可能である。VR(仮想現実)技術が高度化すれば、文字通りゲーム空間のなかで様々なイベントやアクティビティを違和感無く実施できるようになるかもしれない。まさに、スピルバーグ監督がVR世界でのアドベンチャーを描いた、ハリウッド映画「レディ・プレイヤー1」のように。
こうした観点では、確かに任天堂は大きな先行者メリットを有していると考えられる。ただ、他の主要なゲーム企業にもその道は拓かれていることを忘れてはならない。ちょっと先の話になろうが、どのゲーム企業が将来の社会インフラ企業に成長するのか、今から楽しみである。
主な関連銘柄(銘柄略称)
主な関連銘柄としては、日本株ではコーエーテクモ(3635)、ガンホー(3765)、ソニー(6758)、任天堂(7974)、スクエニHD(9684)、カプコン(9697)、米国株ではエレクトロニックアーツ(EA)などが挙げられよう。
(マーケット支援部 山本)