世界的に拡がる「オンライン診療」
新型コロナのパンデミックを1つの契機として世界規模で市場が拡大している「オンライン診療」。厳密な意味では相違はあるものの広義で捉えた場合、市場規模が2025年には2016年比で3.8倍に拡大するとされている。
今回は、日本、米国、中国と3カ国に分けて、各国における現状をまとめた。
レガシーが加速させた「米国」
米国においては、2014年1月から開始された国民皆保険制度を含む医療保険制度改革(通称オバマケア)以後、オンライン診療が普及しつつあった。インターネットユーザーの検索動向を観ても、オンライン診療への関心が高まってきている傾向が見られる模様。加えて、一部調査では、時間をより有効に活用できる点や、外出するのに十分な体調ではなくても気軽に利用できる点、病院等から家や職場が離れていても診療を受けられる点からオンライン診療が支持を集めているとのことだ。
ちなみに、主な事業者として挙げられるのはテラドックヘルス。オンライン診療サービスを展開する同社の総売上高は、2017年から2019年に2倍超に膨れ上がった。これはコロナ禍前の話であり、足もとの情勢に鑑みれば、さらに(市場が)拡大することが予想される。現に、オンライン診療対応の医療機関がコロナ前の23%から76%に増加したとのこと。
米国に関してもう1つ注目したいのがアマゾンだ。同社は2018年のヘルスケア新会社共同設立とオンライン薬局のピルパック買収といった布石を打った上で、オンライン医療サービス「Amazon Care」を一部従業員向けに提供している。クラウドサービスと同様に、いずれは広く一般に提供していくものと考えられる。筆者としては、アマゾンとテラドックの今後の関係性が楽しみでもある。
国策を支援に拡大する「中国」
中国では2015年の「インターネットプラス政策」に前後して関連ビジネスが誕生した後、各種規制緩和が行われオンライン医療市場が拡大。今年3月には一部に公的医療保険の適用方針が固まったことで、拡大ペースが更に加速することが見込まれる。
主なサービスとしては、中国民営保険トップの中国平安保険傘下、平安健康医療科技の提供する「平安好医生」があり、登録ユーザー数は3億1520万人にも及ぶ。他にも、アリヘルス(アリババ傘下)やウィードクター(テンセント傘下)、JDヘルス(JDドットコム傘下)があり、おなじみの中国ハイテク企業も名を連ねている。
これから、な「日本」
日本では2015年に解禁されたものの2018年と2020年の診療報酬改定を除けば目立った動きが少ない印象だ。ただ、新型コロナの感染拡大を受け暫定措置として初診患者への適用を認めたことを契機に日本でもオンライン診療市場拡大の兆候が見られている。自民党の行政改革推進本部が同措置の恒久化を提言しており、これからに期待できよう。
草分け的存在としては「クリニクス」を手掛けるメドレーがあるが、ソニーやNTTドコモ、LINE等の異業種が取り組む事例も見られる。日本勢の巻き返しは始まったばかりだ。
主な関連銘柄(銘柄略称)
主な関連銘柄としては、日本株ではエムスリー(2413)、クオールHD(3034)、メドレー(4480)、メドピア(6095)、オムロン(6645)、ソニー(6758)、米国株ではアマゾン(AMZN)、テラドックヘルス(TDOC)、中国株ではアリヘルス(00241)、平安健康医療科技(01833)、京東集団(09618)などが挙げられよう。
(マーケット支援部 山本)