スペースXが快挙
5/31未明に、EV専業テスラのCEOイーロン・マスク氏が創業した宇宙ベンチャー「スペースX」が米国では9年ぶりとなる偉業を達成した。
スペースXはケネディ宇宙センターから有人の新型宇宙船「クルードラゴン」を初めて打ち上げた。米国人宇宙飛行士2名が搭乗した同船は予定通りに軌道に投入され、約19時間の飛行を経て国際宇宙ステーションに接続した。民間企業が開発を主導した有人宇宙船としては初の快挙となる。
宇宙開発は民間主体となるか
今回のスペースXの事例は、有人宇宙飛行という点では先述の通り9年ぶりだが、宇宙船という点では実に約40年ぶりの新型船となる。米国は1981年に初飛行したスペースシャトルが2011年に退役を迎えてからはロシアの宇宙船「ソユーズ」に宇宙輸送を委託していたが、開発主体を民間に移管することで宇宙船開発のコストを削減するのと同時に宇宙産業を育成する狙いがあるようだ。
従来、宇宙開発においては人工衛星打ち上げといったような無人分野において民間移管が進んでいた。ただ、スペースXに加えて航空機大手ボーイングによる来年の有人飛行実施を目指した「スターライナー」開発や、シエラネバダ社による「ドリームチェイサー」という有人小型シャトルの開発が伝わっており、徐々に民間企業の存在感は有人宇宙開発でも高まってきている様子が見受けられる。
ちなみに、NASAは火星探査等に注力するようだが、アマゾンCEOジェフ・ベゾス氏が設立した「ブルー・オリジン」が月面着陸機を発表したように、火星探査等でもいずれ民間企業の存在感が高まっていくだろう。
宇宙での生活という新・ニューノーマル?
人工衛星から得られるビッグデータを農業や防災、交通等の分野に活用することで我々の生活を改善或いは向上させようという取り組みは以前より散見されるが、足もとでは宇宙空間に対する見方が「生活をよりよいものとするための触媒」から「生活そのものをする空間」へとシフトしつつある印象だ。例えば、ビゲロー・エアロスペース社は月の周回軌道に「宇宙ホテル」を配備する計画を打ち出した経緯がある他、ANAとH.I.S.は国内唯一の有人宇宙機開発会社PDエアロスペースと宇宙旅行実現に向け提携するといったように、宇宙空間で生活をするのが当たり前になるような未来を見据えた行動が見られる。
宇宙での生活が常識となった世の中でのニューノーマルには進歩の意味合いが強くなっていることだろう。
主な関連銘柄(銘柄略称)
主な関連銘柄としては、日本株ではソニー(6758)、IHI(7013)、キヤノン電(7739)、*ANA(9202)、米国株ではアマゾン(AMZN)、ボーイング(BA)などが挙げられよう。
*ANA(9202)は貸株注意喚起銘柄(6/4時点)
(マーケット支援部 山本)