進む少子高齢化
日本では急速な少子高齢化が進んでいる。これは生産年齢人口の割合が減少することを意味し、このまま行けば、2060年には高齢化率は40%近くなるとのこと。社会保障費用は今後急速に膨らんでいき、現役世代がこれを支えていくことの限界が出てくる。
また、2060年には100億人を突破することが予想されている世界人口についても、高齢化率は大きく伸びることが見通されている。日本が抱える問題は、グローバルスタンダードの性質を帯びそうだ。
台頭する「デジタル治療」
足もとで、病気の予防・管理・治療にソフトウェアを活用するという「デジタル治療」の存在感が増しつつある。これは従来の治療に追加したり置き換えたりすることが可能であり、生活習慣や行動変容で管理が可能な場合、投薬治療に先駆けて取り組む場合もあるため、主に高血圧や糖尿病等の生活習慣病関連領域が対象分野となっている。もっとも、対象領域は拡大の兆しを見せており、神経学的疾患向けの製品も登場している模様。
一部試算によれば、デジタル治療の世界の市場規模は2025年に90億ドル規模に達する(2019年には20億ドル程度)とされ、他のヘルスケア(モバイルヘルスや遠隔医療等)よりも市場規模は小さい。ただ、デジタルヘルスの多くのテクノロジーを支える重要な役割を果たす可能性が指摘されている。一例を挙げれば、糖尿病患者を対象にしたデジタル治療製品があろう。これは、アプリやインターネットデバイス、臨床医、医療指導者等から構成されるが、病気管理プラットフォーム実現のため、様々な健康関連テクノロジーを融合させているようだ。
付け加えると、デジタル治療は残薬問題の解決に寄与する可能性もあろう。
米IT大手BIG4も照準
デジタルヘルス領域を巡っては、既に米BIG4(Amazon・Google・Apple・Microsoft)も動き出している。例えば、Appleが大学等と連携する他、退役軍人省と連携して900万人の健康・医療データを取り扱う他、Googleは大手病院と連携し1500万人以上のデータを、Microsoftは保険会社と連携して400万人のデータを取り扱っているようだ。Amazonに関しては各種取り組みを行うが、どの程度の規模かは不明。とはいえ、米IT大手がデジタルヘルスケアへの取り組みを加速させている点は無視できない事だけは確かだろう。
もちろん、日本勢もNTTドコモやDeNA等を中心に取り組みを強化している。今後の動向に要注目だ。
主な関連銘柄(銘柄略称)
主な関連銘柄としては、日本株ではDeNA(2432)、アステラス薬(4503)、NTTドコモ(9437)、米国株ではアマゾン(AMZN)、アルファベット A(GOOGL)、中国株では平安健康医療科技(01833)などが挙げられよう。
(マーケット支援部 山本)