「情報銀行」が動き出す
2019年末、あるニュースが報じられた。みずほ銀行とソフトバンクが、2020年(今年)春にも、利用者の同意に基づき預かった個人データを第三者である企業に提供する「情報銀行」を共同で始めるというものだ。
両社が共同出資し、個人の信用力をAIでスコアリングする事業を手掛けるJスコアが主体となる。同事業で得た職業や年収、趣味といった個人情報を活用するとのことだ。
注目集める情報銀行
そもそも情報銀行誕生の背景には、データ活用の機運と、個人情報保護の重要性がある。IoTデータをビジネスに活用する機運が高まるなか、データ活用の分野で日本は出遅れているとの指摘は根強い。ただその一方で、日本では個人情報の活用よりも保護に重点を置くべきとの指摘も根強く、こうした事情から情報銀行が浮上した。
個人データが新たにビジネスやサービスを生み出す資源としての性質を帯びていることに加え、企業にとって販売や商品開発等の戦略を検討する上でビッグデータをいかに入手するかが欠かせない課題となっていることも、情報銀行が注目を集めつつある背景としてあろう。
その情報銀行に関しては、すでに幅広い業種で参入等の動きが見られている。2019/6/26には三井住友信託銀行とイオン系のフェリカポケットマーケティングが、12/25には先述のJスコアが日本IT団体連盟による「情報銀行」認定を取得。また、電通がグループで実証実験を行ったり、日立が東京海上日動火災保険や日本郵便等と共同で情報銀行の実証実験を行う等、異業種が垣根を越えて参入の動きを見せている。さらに、スカパーJSATは既に視聴情報を活用しているようだ。
情報銀行はヘルスケアで強みを発揮する?
では、情報銀行はどのような領域でその潜在力を発揮しうるのか。その1つとして考えられるのがヘルスケアだろう。
例えば、既に深刻な社会問題となっている認知症。ヒトの脳機能が高度であるが故に治療薬の開発が難航し、治験中止が相次いでいる。成功に向けては「正しい創薬標的」「正しい患者層」「正しい臨床評価指標」等を設定することが重要とされ、そうした設定を実現するには、それこそビッグデータを入手し有効活用することが急務であり、情報銀行の出番と考えられる。
ただ、そうした有効な個人データを集めるには、利用者に具体的な便益を提示する必要がある。企業にとってはコストとなるだろうが、データ活用を推進すべく、企業努力が求められるだろう。
主な関連銘柄(銘柄略称)
主な関連銘柄としては、クラウドワクス(3900)、インテージHD(4326)、日立(6501)、三菱UFJ(8306)、スカパーJ(9412)、ソフトバンク(9434)などが挙げられよう。
(マーケット支援部 山本)