キャッシュレス決済普及に向けて
10/1の消費増税とともに始まったキャッシュレス・消費者還元事業。10/25には1日平均10億円分のポイントが消費者に還元されている旨が明かされ、来年3月末までに原資が不足する可能性があるとまで言われている。
経済産業省によれば、同事業は2020年6月まで続く、キャッシュレス決済事業者への補助金支給を通じた中小・小規模事業者等のキャッシュレス決済導入支援ないし消費者の負担軽減策。対象となる決済手段は、クレジットカードやデビットカード、電子マネー、QRコード等が挙げられている。
キャッシュレス戦線拡大中
キャッシュレス戦線(キャッシュレス・ウォーズとも言い換えられよう)は着実に拡大しているようだ。スマートフォン決済だけでも、「ペイペイ」、「LINEペイ」、「楽天ペイ」、「メルペイ」、「Origami Pay」、「d払い」、「auPAY」、「J-coin Pay」、「ゆうちょPay」、「ファミペイ」、「Suica」等、多様なサービスが展開されている。利用動向も、消費増税以降、好調なようだ。ペイペイ・楽天ペイ・d払い・auウォレットの4アプリの合計月間利用者数(MAU、10月時点)は987万人と、わずか2ヵ月で47%増加したとの一部試算がある。4アプリ毎では、増加幅にブレがあるものの、いずれも増税前よりも利用者数が伸びた模様だ。ちなみに、JR東日本の提供するSuicaポイントの会員の9月の入会者数が8月の14倍になる等、増税前の時点でもキャッシュレス戦線拡大の兆候を示すデータがあった。
キャッシュレス決済の今後の拡大余地は、依然として相当程度大きいと思われる。政府はキャッシュレス決済の比率目標を2025年に40%としているが、足もとでは21.3%(2017年時点)。直近で比率は上昇しているだろうが、政府目標との乖離はまだ大きいと考えられる。
重要な2つの視点
キャッシュレス・ウォーズに関して重要なこととしては、次の2点が考えられよう。それは、データとプラットフォームだ。
データに関しては、300兆円規模にも達するとされる年間の家計消費にもとづく膨大な購買データが該当する。キャッシュレス決済に、金融のみならず情報通信、小売等の異業種が参入している背景には、そうしたビッグデータを活用して自らのビジネスを成長させようとする動機があると考えられる。
プラットフォームに関しては、文字通り決済プラットフォームだ。決済事業者と加盟店との取引を中継する役割を担う。支払い方法は違えど、決済プラットフォームを経由することは避けて通れないものであるため、このプラットフォームを保有するものがキャッシュレス決済普及の恩恵を大きく受けよう。
キャッシュレス・ウォーズの奥は深い。
主な関連銘柄(銘柄略称)
主な関連銘柄としては、GMOPG(3769)、アイリッジ(3917)、メルカリ(4385)、楽天(4755)、ソニー(6758)、JR東日本(9020)、NTTデータ(9613)などが挙げられよう。
(マーケット支援部 山本)