約10年ぶりの策定
6/21に、政府は「統合イノベーション戦略2019」を閣議決定した。戦略では、超スマート社会たる「Society 5.0」の早期実現に向けた強化すべき基盤的技術分野として、AI技術・バイオテクノロジー・量子技術が指摘されている。
なかでも、バイオ分野の戦略策定は約10年ぶりのことである。政府は9つの重点領域に絞り、2030年まで重点的に産業化を支援する。
米欧中への後れという危機感
政府が今回、バイオ分野を久方ぶりに戦略として策定した背景としては、研究面ではバイオ分野のビッグサイエンス化や異分野融合、オープンサイエンス化の急速な進展が、産業面では合成生物学やゲノム編集技術等の進展による全産業のバイオ化といった情勢等が挙げられている。
さらに言えば、米欧中に日本は産業化で後れをとっているという現状もある模様。日本には優れた研究成果が数多いにもかかわらず、人材不足や先端機器の不足、分散型研究の常態化に伴いイノベーションに必要なビッグデータがほとんど構築されていないという事情から、産業化の実績が乏しいとのことだ。
合成生物学の飛躍なるか?
2030年代にはバイオテクノロジーが貢献する市場規模はOECD加盟国の対GDP比率で2.7%(約1.6兆ドル)に達し、産業別割合では工業が39%、農業が36%を占めるとのこと。
今回のバイオ戦略を通じて筆者が期待するのが、合成生物学の日本での本格的な発展だ。
2010年に海外で注目を浴び始めたそれは、機械の生産のように必要な機能を発揮するよう改変されたDNA(パーツ)を組み合わせてデバイスを創り細胞に組み込むというもの。生命システムの複雑さ故に課題は山積しているが、課題解決の動きは進んでいる模様である。
有用物質の高効率生産や石油化学プロセスの代替、生産工程の短縮等、産業応用の観点から大きな期待が寄せられている合成生物学。今回の戦略策定を機に日本で広まっても何ら違和感は無いだろう。
主な関連銘柄(銘柄略称)
主な関連銘柄としては、日本株ではカネカ(4118)、楽天(4755)、島津製(7701)、米国株ではアムジェン(AMGN)、イルミナ(ILMN)などが挙げられよう。
(マーケット支援部 山本)