見え始めた経済正常化
新型コロナワクチンを接種すれば、万が一感染しても重症化が予防される効果があるとされているのに加え、他者にうつしてしまう可能性を減らす効果も期待されている。
足もとで国内の新型コロナワクチン接種率は、2回接種者が50.9%となり、米国並みの水準にまで到達した。11月に希望者全員への接種を完了させることが視野に入り、同時に経済活動の本格的な正常化が見えてきそうだ。
ワクチンと治療薬の二刀流が支えに
ワクチンの効果は大きいが、感染リスクはゼロになる訳では無い。経済正常化に向けては、万一感染した場合の対策が重要となる。ここで登場するのが、抗体カクテル療法だ。
「抗体カクテル療法(中和抗体薬)」とは、2種類の抗体を混ぜ合わせて点滴投与し、新型コロナウイルスの働きを抑えるもの。既に重症者以外を対象に投与が始まっており、国内では中外製薬が販売している。東京都の調査では投与から14日以上経過している420例のうち400例で症状が改善したようだ。
また、塩野義製薬は飲み薬タイプの治療薬を開発中で、2022年3月末までに国内外で1000万人分の生産体制を整える方針と伝わっている。実用化されれば在宅療養患者も使いやすくなるといい、医療体制への負荷も相当程度軽減されると思われる。そのため、「ワクチン+治療薬」という"二刀流体制"も、経済正常化の重要な基盤要素となりそうだ。
「Re-Opening」の扉が開く
コロナ禍においては、感染拡大抑止の観点から打たれた様々な対策によって、幅広く需要が減退した。なかでも特に影響が甚大だったと見られるのが、旅行やレジャー、交通、(酒類の提供を伴う)飲食店等の業界だろう。
「Re-Opening」の局面では、これらの業界は抑制されていた需要の回復による、いわゆる「リベンジ消費」が盛り上がることが予想される。そして、その波は当該業界に留まらず、旅行つまり広域圏での人流の回復による交通需要の増大といった具合に、他業界への波及効果も十分見込まれよう。
足もとでは3カ月前と比べても、状況が改善に向かいそうな兆候が揃い始めているような印象。株式市場においても、コロナ禍で定着しつつあるニュー・ノーマル思考からの転換が求められているのだろう。
(マーケット支援部 山本)