5月連休の航空予約が倍増
中国の観光業界が復調の兆しを見せている。新型コロナの感染拡大が一服し、移動を控えていた市民の旅行や帰省ムードも上昇中。4月の清明節(4/3-5)、5月の労働節(5/1-5)、6月の端午節(6/12-14)の各連休を控え、旅行や航空セクターの盛り上がりが期待される。
中国の国内旅行者数は、2019年に過去最多の60億600万人に上ったが、新型コロナ禍に見舞われた20年は半分以下の28億7900万人に減少した。それでも、大型連休期間中の旅行者を比べると、労働節(20年5月)は前年の6割弱にとどまったが、国慶節(同10月)は8割以上まで回復。今年の労働節連休中の航空チケット予約数は19年同期の2倍に上っているという。中国旅遊研究院は、今年通年の国内旅行者数が前年比42.4%増の41億人(15年とほぼ同じ水準)になると予想している。
関連企業の業績じわり回復中
関連企業の業績も回復中だ。ネット旅行手配の同程藝龍控股(00780)は、20年1-3月期は前年同期比43.6%減収だったが、同10-12月期は同7.3%減収まで復調。美団(03690)の旅行関連業務(売上高の約2割前後)も同様だ。
LCC(格安航空会社)の春秋航空(601021)のロードファクター(有償座席利用率)は、平時は概ね90%以上で、"航空ビッグ3"と称される東方・国際・南方の各航空会社の値を大きく上回る。苦戦した20年も9月には一時89.3%まで回復。同社の19年売上高は148億元で、中国東方航空(00670)の約8分の1に過ぎないが、純利益率は東方の2.6%に対し春秋は12.4%。効率良く稼いでいることが分かる。
旅行セクターはシクリカルの一角
3月の全国人民代表大会(全人代)でも観光分野の強化がうたわれ、「国民レジャー要綱(2021-35年)」の策定・実施方針が報告文書に盛り込まれた。有給休暇制度の有効活用の議論が進み、社会的に余暇を楽しむ機運も高まっている。22年の北京冬季五輪をきっかけにスキー旅行など新たな分野の開拓も進むだろう。
旅行・観光関連株はシクリカル銘柄(景気敏感銘柄)の一角。新型コロナ禍の鎮静化やワクチン接種の拡大に伴い社会・経済活動の正常化が進めば、恩恵を受けやすいセクターの一つと言える。まずは"コロナ前"へのV字回復に向けて期待が高まりそうだ。
(上海駐在員事務所 奥山)