長い交渉を経て大型協定が成立
11/15、ASEAN10カ国や日本、中国等の15カ国は(東アジア地域の)地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に署名した。2012年11月に交渉立ち上げが宣言されて以来、実に8年の時を経て成立した同協定は、2018年末に発効したTPP(環太平洋パートナーシップ)を上回る数の国が参加。世界の貿易総額の3割を占める世界最大級のFTA(自由貿易協定)となり、品目ベースで関税の91%が段階的に撤廃される見通しだ。
RCEPがなぜ重要なのか
RCEPが重要となる背景としては、主に次の2点が考えられる。それは、世界貿易におけるアジア地域の役割と、中国の存在感の高まりだ。
WTO(世界貿易機関)のデータによれば、世界の貿易額に占めるアジアの割合は2019年度実績で35.7%を占めており、世界的な金融危機の起こった2008年度の29.2%からシェアがじわり拡大している。タイやベトナム、インドネシア等のアジア諸国が「工場」としての求心力を高めていることが寄与していると考えられる。加えて、中国に至っては同期間における世界貿易に占めるシェアを8.8%→13.2%へと伸ばし、米国の水準(8.6%)を上回るまでになった。
その他の項目で見ても、重要性が際立つだろう。人口ベースでは22億人強と世界全体の3割、GDPベースでは25兆ドル強と同3割、先述した貿易総額については、日本に限って言えば約5割を占める規模である。昨年11月に交渉から離脱したインドが最終的に参加していれば、その重要性は更に高まっていたものと思われる。
このように、現代世界の貿易の中心地たるアジアで、地域をほぼ網羅するFTAが成立したという事実こそが意義深いのである。
産業保護と輸出強化を両立せよ
一方で、RCEPの課題として指摘されているのが、自由化水準が低いというものだ。データ流通等のルール分野ではTPP等に比べ水準の低さが目立つ他、EVといった今後の競争分野では特に、発効後かなりの時を経てから(例えばEV用電池材は16年目以降)でないと撤廃されない模様。
そうは言っても、長い目で見れば非常に多くの製品等が関税撤廃されるのは事実であり、むしろ企業にとっては海外・外国市場で自社製品の競争力を強化するための製品開発・改良、マーケティングに投じる時間が確保されたとしてポジティブに見るべきだろう。
RCEPはアジアが名実ともに世界貿易の盟主となるためのファースト・ステップである。
主な関連銘柄(銘柄略称)
主な関連銘柄としては、日本株ではポーラオルHD(4927)、ガイシ(5333)、オークマ(6103)、コマツ(6301)、トヨタ(7203)、中国株では美的集団(000333)、格力電器(000651)、貴州茅台酒(600519)、海爾智家(600690)などが挙げられよう。
(マーケット支援部 山本)