2019年はキャッシュレス元年に?
2019年はキャッシュレス元年とも呼べる年になるかもしれない。昨年PayPayやLINE Payなどが大規模還元策を実施したことで、昨年末辺りからキャッシュレス決済への注目度は高まりつつある。また、政府が消費税率引上げの悪影響の緩和策として、キャッシュレス決済への優遇策を検討していることもその流れを後押ししそうだ。2018年に経済産業省が策定した「キャッシュレス・ビジョン」では、2025年までに「キャッシュレス決済比率」を40%程度にし、将来的には世界最高水準の80%を目指すとしている。今回の施策はこのビジョンを後押しするものだと言えそうだ。
とは言え、日本のキャッシュレス比率は18.4%(2015年)とキャッシュレスの普及度合いはキャッシュレス先進国(およそ40%~60%)に大きく水をあけられている状況だ。日本でキャッシュレスの導入が進んでいない背景には、現金への信頼の高さやレジの処理の正確さ、店舗への導入費用の高さなどがあるとされる。一方、普及が進んでいる国では政府による優遇措置が普及の後押しとなった事例も見られ、今回のキャッシュレス優遇策の効果に期待したい。
政府の施策は呼び水となるか
消費税率引き上げ後の悪影響緩和策として、政府は2019年10月からオリンピック・パラリンピック前の2020年6月まで9カ月間に限定し中小小売業等において、消費者がキャッシュレス決済を行う場合、5%(または2%)のポイント還元による支援を実施するための予算2798億円を予算案に盛り込んだ。
この政策は、カード事業者のシステムに中小企業という分類が存在しておらず、期間限定措置でシステム投資も嵩む事から、カード事業者から必ずしも評判が良いとは言えないようだ。
しかし、他国の事例を見ると、国の施策がキャッシュレス決済普及のきっかけとなった事例が見られる。例えば韓国では年間クレジットカード利用額の20%(上限30万円)の所得控除、宝くじの権利付与など、優遇措置を講じるなどの政策が実施された。これらの施策が実施された結果、1999年から2002年の間に、クレジットカード利用金額が6.9倍に増加した。
キャッシュレスが新たな収益源に
キャッシュレス決済の現金決済との大きな違いはIDなどを用いて、*APIで利用者の購買履歴や外部データと紐付けしていけることにある。このデータを用いて新たな顧客サービスを創出していけるかが成功のカギになりそうだ。例えば、アリペイの利用者はタクシーやホテル予約、映画チケット購入、公共料金や病院の医療費の支払いまでカバーしており、生活プラットフォームとも呼べる存在となっている。日本でもAPIを活用し、新たなビジネスの創出に繋げているかが注目されそうだ。
*APIとはApplication Programming Interfaceの略で、プラットフォーム側の汎用性の高い機能を外部から手軽に利用できるように提供する仕組み
主な関連銘柄(銘柄略称)
主な関連銘柄(銘柄略称)としては、日本株はLINE(3938)、ヤフー(4689)、楽天(4755)、ソフトバンク(9434)、NTTデータ(9613)、米国株はアマゾン(AMZN)、アメックス(AXP)、アリババ(BABA)、ペイパルホールディングス(PYPL)、スクエアA(SQ)、ビザA(V)、中国株は騰訊控股(00700)などが挙げられよう。
(マーケット支援部 藤本)