海外からの中国A株投資拡大に期待
~19年は前半軟調も、年末にかけての戻りを予想~
18年の中国株相場の重荷となった米中貿易摩擦。この影響により、中国主要株価指数は下値模索が続いた。しかし、10月に中国金融当局トップが揃って株価支援策となる口先介入を行い、これを機に下げ渋る動きとなった。米中貿易摩擦を巡っての一喜一憂は19年相場も続くだろう。しかし悪材料視する動きは18年と比較するとマイルドなものになると思われる。19年は、前半は軟調ながらも年末にかけて戻りを試す動きを予想する。政策や中国A株の英FTSEラッセル採用などが相場の押し上げ材料となろう。
【2018年の相場回顧】
18年の中国株式市場は、年初は世界的な株高に歩調を合わせる形で上昇して始まった。中国市場は緩やかに上昇、一方香港市場でハンセン指数は大きく上昇し1月26日終値33,154ptと、過去最高値を更新。
しかし、中国株式市場は1月を年初来高値として一転し、秋まで下降トレンドが続いた。
中国国内では、影の銀行(シャドーバンキング)や不動産引き締め強化への思惑が投資家心理を冷やし、海外では、米国による対中貿易赤字に端を発した米中貿易摩擦が激化するにつれて、中国株式市場は下げ足を速めた。対米ドルで人民元安が進行したことも相場の重荷となった。
一方、中国当局による景気への配慮も目立った。6月に預金準備率引き下げを発表、7月に流動性の供給が行われたほか、政策面では景気下支えを目的にインフラ投資拡大が打ち出された。
秋口にかけて米中貿易摩擦が嫌気され、中国本土主要株価指数は14年以来約4年ぶりの安値水準まで売り込まれた。そして10月19日朝、中国金融当局トップが揃って株価支援となる口先介入を行うと、これを好感。株価は反転して、これまで続いた「じり安商状」を抜け出した。
12月相場入りしてG20での米中首脳会談結果を好感する場面もあったが、華為技術(ファーウェイ)幹部のカナダでの拘束・保釈を巡り、一喜一憂している。
次頁に中国主要株価指数の18年予想レンジと同年の高値と安値、そして19年の予想レンジをまとめた。18年は、高値は予想値と同水準に落ち着いたが、安値は特に中国市場が予想値を下回る結果となった。
【2019年の相場見通し】
19年の中国株式市場は、前半は軟調ながらも後半に向けては戻りを試す展開を想定している。
1~3月は米中貿易摩擦に対する協議を巡っての駆け引きや、同問題が18年秋以降に中国経済や企業の生産活動に与えた影響を相場に織り込む動きとなろう。もっとも、6月からは英FTSEラッセルが中国A株を段階的に「FTSEグローバル株式インデックスシリーズ」に組み入れる見込み。パッシブ運用者などの資金流入が期待でき、相場押し上げにつながる公算が大きい。海外投資家への市場アクセス改善が新たな投資資金を呼び込むかもしれない。
19年は中国建国70周年となる。節目の年に中国政府は景気の減速を回避すべく、様々な刺激策を発動するだろう。米中貿易問題も18年ほど悪材料視されないと思う。20年の米大統領選挙に向け、トランプ氏の関心は米国内に向くと思われるからだ。
需給面では海外投資家の手口に注目したい。18年の中国市場の売買代金推移を見ると、相場の下落に連動して上海・深セン両市場の売買代金が減少、中国国内の投資家心理の冷え込みが伺える。しかし、その期間の海外投資家による「滬港通・深港通」の売買代金動向に目を向けると、上海・深セン両市場とも安定しており、深セン市場に関しては増加傾向にあるようだ。相場の下落局面でしたたかに買いを入れる海外投資主体の投資動向が垣間見える。冷静に中国株の将来性を見込んでの手口なのであろう。
19年6月からのFTSEラッセルによる中国A株組入れで、海外投資家の商いが増しそうだ。
この資料に記載されている内容は東洋証券の見解であり、将来を保証するものではありません
(投資調査部 檜和田)