2019年は次世代高速通信「5G」が本格的にテイクオフする年となりそうだ。中国では上半期にも「5G通信ライセンス」が発給され、下半期にかけて5G対応モバイル機器が発売される見通し。来年の東京五輪、22年の北京冬季五輪などのイベントとも合わせ、高速通信を活用した各種サービスが登場してくるだろう。マーケットでは早くも「5G関連株」が賑わっている。
IoT社会の構築後押し
年内の運用開始が見込まれる5Gは、通信速度がアップするだけでなく、社会インフラの大改革につながるとされる。これまでの通信高速化では、PCやスマートフォン(スマホ)でのネット閲覧がスムーズになったり、写真や動画などの閲覧・投稿の利便性が増してきた。一方、5Gの導入はいわば「通信革命」。超高速通信を活用し、各種機器の遠隔操作や遠隔医療、自動運転やコネクテッドカーの発展が進むと考えられる。様々なビジネスシーンやエンターテインメント市場で、新たな付加価値を生むサービスが誕生してくるだろう。
5Gの特徴は、①超高速、②超低遅延、③多数同時接続、の三つに分けられる。
①の超高速は、現在のブロードバンドが100倍速くなるとイメージすれば分かりやすい。現行の4Gでは2時間の映画のダウンロードに約5分かかるが、5Gではわずか3秒で完了してしまう。動画や広告配信もストレスなく楽しめそうだ。
②の超低遅延は、遅延(タイムラグ)を意識することがないくらいのリアルタイム感が生まれるということ。油圧ショベルなど建機の遠隔操作では、映像遅延が0.2秒だと作業員の疲れが生じやすいとされるが、5Gを使うことで0.1秒以内に抑えることができるという。ロボットの精緻な操作や、トラック隊列走行など自動運転分野の発展にもつながるだろう。
また、③の多数同時接続により、身の回りのあらゆる機器がネットにつながり、IoT社会の構築がより進むと見られる。ヒトやモノの管理が簡単に行えるため、災害時の避難者確認や倉庫管理などでの応用が期待される。
物色進む5G関連株、短期的には川上産業中心
中国でも5G商用化に向けた動きが着々と進んでいる。19年上半期中に「5G通信ライセンス」が発給され、下半期にかけて5G対応モバイル機器が発売される見通しだ。18年12月に開催された中央経済工作会議でも、19年の経済政策方針の一つとして5G事業化ペースを上げることが盛り込まれた。
「Xiaomi(シャオミ)」ブランドでスマホを展開する小米集団(01810)は、5G対応端末を19年9月までに中国市場で投入する計画という。中国政府は、5G技術を使った4Kコンテンツの配信などを進めて行く考えだが、高性能製品への買い替えキャンペーン「汰旧換優」を通じて、将来的に4K対応テレビの市場拡大につながるかもしれない。
軟調な相場展開が続く中国株市場では、「5G」が有望な投資テーマとなっている。北京市政府が1月22日に「通信キャリアが向こう4年間で5Gネットワーク建設に300億元超を投資する」という予測を出したことで、関連株が物色される場面もあった。
基本的な投資戦略としては、短~中期的には基地局や光ファイバー網の整備が進むと見られることから、中国鉄塔(00788)や長飛光繊光纜(06869)などの川上企業が注目されそうだ。中~長期的には、5G関連ビジネスを手がける企業にも恩恵が広がりそう。VR(仮想現実)事業を行う歌爾(002241)、コネクテッドカー(つながる車)を強化中の吉利汽車HD(00175)、高速通信により既存ビジネスの拡充を図ることができる科大訊飛(002230)を関連株として挙げたい。ロボットや建機の遠隔操作の認知が広まれば、美的集団(000333)や三一重工(600031)が注目される場面も出てくるだろう。
(上海駐在員事務所 奥山)