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中国からの便り

第171回:人助けにもリスク? 崩壊モラルにブレーキなるか

「人助けを自分の喜びとする」ことは中華民族の伝統的な美徳だろう。その「人助け」の象徴は、中国人なら誰もが知っている雷鋒だ。中国人民解放軍の模範兵士とされる彼は、1962年に22歳の若さで亡くなったが、それまでに行った数々の善行がよく知られている。当時の毛沢東主席は雷鋒の無私の精神に感動し、毎年3月5日を「雷鋒に学ぶ日」に設定したほどだ。このことから、雷鋒の名と善行は市民の意識に深く刻み込まれているが、一方で、現代に生きる我々は人助けの勇気を失ってしまったとも感じている。

話は2006年に南京市で起きた「彭宇事件」から始まる。彭宇という名の男性(当時26歳)の善行をめぐる奇妙な出来事だ。彼は、バス停で転んだ老人を助け起こして病院に送り届け、診療費まで立て替えたのだが、老人からは逆に訴えられてしまったのだ。老人側は「彭宇に突き飛ばされて転んだ」と主張し、賠償金13万元を求めるというトンデモ展開。

裁判官は「(彭宇が)正義心からの行動なら、老人を助け起こす前にまず犯人を捕まえるはず」「被告は原告を突き飛ばしたことの後ろめたさから病院まで送った」という、これまた突拍子もない推測をもって、一審で彭宇を犯人と認定。約4万5000元の支払いを命じた。彭宇はこの判決に不服で、中級法院に上訴。すわ冤罪裁判で泥沼化か......と思われたこの事件は、しかし、最終的に和解という超意外な結末を迎えた。両者は事件の経緯について秘密保持契約も作成。供述原本も紛失し、真相はやぶの中だ。

一連の騒動を受け、市民が抱いた印象は「善行は賠償や裁判沙汰になりかねない」というもの。これが、後日発生した「モラル崩壊」事件につながった。

11年、広東省仏山市。当時2歳の女児が道路で2台の車にひかれてしまった。しかし、通行人18人はそれを完全に無視。監視カメラの映像には、見て見ぬふりをする無慈悲な大人の姿が映っていた。女児はその後、搬送先の病院で亡くなった。

同様の出来事はネット検索で数多く出てくる。筆者は「見殺し」行為には賛成できないが、理解できないとも言えない。誰も「彭宇」の二の舞にはなりたくないだろう。

「彭宇事件」の後、中国では「扶不扶」(助け起こすかどうか)が社会的な話題となった。中国政府は11年、「老人の転倒時の技術関与指南」なるものを公表。転んだ老人に遭遇した場合の正しい対処法を技術面から丁寧に説明した。だが、指南発表後の市民アンケートでは、43%が「(老人を)助けない。法律上の保障もないし」と答えている。「助ける」と答えたのはわずか19%。「善行は賠償や裁判沙汰になりかねない」という懸念が市民の心の中に深く根付いているようだ。

だが、改善の兆しも出てきた。17年に河南省で発生した「エレベーター内での喫煙制止事件」。団地のエレベーターでタバコを吸っていた段さんと、それをとがめた楊さんの口ゲンカが発端だ。第三者の仲介でその場は収まったものの、その後、喫煙していた段さんが心臓発作で急死。家族は、エレベーターでの口論のせいだとして楊さんを訴え、賠償金40万元を要求した。一審判決では、①口ゲンカと段さんの死亡には直接の関係はない、②"公平の原則"から楊さんは賠償金1万5000元を支払うこと、が決定。原告側は上訴したが、最終審では、「公民は禁煙エリアで喫煙を制止する権力がある」「楊さんの制止行為も正常な範囲で、過激な言語、殴り合いはなかった」「そもそも禁煙のエレベーター内での喫煙行為は正しくない」という(ごくごく当たり前の)判断が示された。賠償金も取り消されたという。

この判決を受け、あるネットユーザーは「崩壊しているモラルを救った」と論評。もし一審のままだったら、「彭宇事件」で傷付いた公徳心がさらに腐っていきかねなかった。もちろん、これだけで長年の"傷"が癒されるわけではないが、希望も抱いている。昨年夏、上海の通勤列車内で気絶した男性を、周りの乗客たちが介抱する姿を見かけた。男性を空いた席まで運んだり、自分の朝ごはんを食べさせたりなど、目の前で繰り広げられる優しさに思わず感動。このような善行が今後も増えていくと信じよう。

(東洋証券上海駐在員事務所 孫 佳賢)

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