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中国からの便り

 第15回:民間企業の経営戦略(1) 盛大網絡

ITバブルが弾けて業界関係者が痛手を負った2000年代の前半、民間経営が圧倒的に多い中国ネット関連企業の海外上場ラッシュが続いた。その当時は、国内A株市場上場の間口が非常に狭く、株式公開にかける時間やコストはもちろんのこと、公開価格や上場後の株価形成面においても、国内より高く評価してくれる米ナスダック市場の優位性は不動のものにみえた。

しかし、あれから10年経過した昨今では、中国ネット関連企業の海外上場も低調で、すでに海外で上場している会社が私有化などを通じて自ら上場廃止の道を選ぶケースも増えている。こうした私有化の代表例は香港上場のアリババ・ドット・コム(今年2月に私有化計画を発表)と、米ナスダック上場の盛大網絡(2月14日に私有化により上場廃止)であろう。

盛大網絡(本社、上海市)は陳天橋氏とその実弟である陳大年氏が99年に設立したオンラインゲームの製作運営会社だ。後にネット起業の「伝奇」的な人物として陳天橋氏をその地位にならしめたヒット商品は、偶然にも01年11月にサービス開始したオンラインゲーム「伝奇Ⅱ(MirⅡ)」であった(盛大網絡が米ナスダック市場に上場した翌年05年は中国IT長者番付1位)。その「伝奇Ⅱ」もまた、常に倒産の危機にさらされていた当時の盛大網絡にとって、すべての手持ち資金を注ぎ込む覚悟の上で韓国のゲーム製作会社Actozに30万米ドルを支払い、中国での独占運営権を取得したものである(盛大網絡がナスダック上場を果たした04年の後半にActoz社の過半数の株式を取得)。

その後の盛大網絡は「伝奇Ⅱ」の大ヒットで急成長を成し遂げてきた。今日に至っては、新規性が薄れている分、かつてのような成長性こそ期待できないものの、「伝奇Ⅱ」は引き続き盛大網絡の稼ぎ柱となっている。「盛大遊戯(Shanda Games Limited:08年7月にゲーム事業の専門子会社として盛大網絡からスピンオフして設立され、09年9月ナスダック上場)」の開示資料によると、同社が運営している計35ゲームのうち、11年実績の売上構成比が最も大きい2タイトルは「伝奇Ⅱ」の40%と、「伝奇世界(Woool:同社が独自開発したゲームで03年11月にサービス開始)」の17%である。

「ネット上のディズニー」を目指している盛大網絡は、ゲーム以外にも様々なネット事業を展開している。しかしながら、本業のゲーム以外では今のところ、まだこれといった成功例は出ていないのが現状だ。

◆「盛大ボックス」:陳天橋氏は04年に社内の反対を押し切ってゲームを中心とした自社コンテンツを織り込んだセット・トップ・ボックスの開発を命じた。インターネットと放送業界の垣根を取り払う試みだが、制度的な壁に阻まれ失敗に終わった。

◆「新浪」の買収:05年にポータルサイト運営大手「新浪」に敵対的買収を仕掛け、一時「新浪」の株式19.5%を取得したが、相手経営陣の買収防衛策もあり、06年末から07年前半にかけて持ち株を売却して買収を断念した。

◆「酷6(Ku6)」の買収:09年に買収した「華友世紀(Hurray! Holding)」を通じて10年初に動画共有サイト「酷6」を買収した。10年に大幅な赤字を計上した「酷6」は11年5月の大量レイオフを経ても目立った収支改善が見られなかった。このことが結果的に盛大グループ内事業再編の引き金にもなった。

今回のグループ内事業再編の最たる措置は前記の盛大網絡の私有化である。上場廃止となった盛大網絡は今後グループ内事業持ち株会社としての立場に徹する一方、事業ごとに設けた傘下子会社は引き続き内外市場への上場を継続する方針だ。

既に米ナスダック市場に上場している「盛大遊戯」と「酷6」のほか、盛大グループ内事業連携の要とされる「盛大文学(Cloudary Corporation)」のナスダック上場も近いと言われている。傘下に複数のネット小説サイトを擁する「盛大文学」の電子書籍事業を起点に、自ら著作権を持つ一部の作品をオンラインゲーム化し、更にヒットしたゲームをテーマパーク化することで、バラバラと言われるグループ内企業の連携を図るという構想だが、ゲーム以外の事業が十分育っていないだけに、実現するまでは前途遼遠だ。

(東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 首席代表 張 岫)
2012年5月30日

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