銀行業務鈍化も景気底入れ、バリュエーション改善へ
貸出金の伸び鈍化と利ざや縮小が見込まれる13年には銀行業績の伸び鈍化が一層鮮明になる見込み。貸出金規模の伸びに関しては、大幅な金融緩和が考えにくいことに加え、預金集め競争の激化や預貸比率の制約などもあり、13年の貸出金純増額は8.5兆元前後にとどまる見込み。利ざやは縮小傾向にある。部分的金利自由化の影響で預金コストが上昇傾向にあるほか、12年の基準金利引き下げの影響や、資金需要の鈍化に伴う銀行バーゲニングパワーの相対的低下により、資金運用利回りも悪化する可能性が高い。与信費用の面では、景気減速に一応の歯止めがかかるようになり、不良債権の大幅な増加は考えにくいが、景気動向に遅行する傾向があるため、不良債権比率は小幅な悪化も予想される。一方、株価の面では景気底入れ感が高まる中、銀行業績への不安が幾分和らぐことも予想され、また新BIS規制への移行に向けた過渡的措置の導入も増資圧力の緩和に繋がる可能性が高いことから、銀行株のバリュエーションは総じて改善傾向にあるものと思われる。(張)保険市場は回復基調、運用環境次第で好業績を期待
12年1-10月における生命保険の総保険料収入は前年同期比1.7%増にとどまった。その背景には、(1)規制強化に伴う銀行窓販による保険料収入の低下、(2)銀行の「理財商品」(資金運用商品)といった競合商品と比べ貯蓄性保険商品の相対的な魅力低下、(3)歩合制営業員増員の難しさがある。資金運用では、A株市場の低迷が原因で保険各社の保有株式において多額の評価損計上を余儀なくされている。13年には、(1)銀行の「理財商品」の利回りの低下に伴い貯蓄性保険商品の銀行窓販が持ち直し、(2)所得税課税繰り延べ型養老保険や重病保険など新保険政策の進展も期待され、総保険料収入は12年比で緩やかな回復を見せると予想される。資金運用においては、(1)新政権による景気刺激策具体化への期待、(2)A株市場のPER(株価収益率)などの株価指標は低水準であり下値余地は限定的、(3)景気回復に伴う企業業績モメンタム改善の予想、などでA株市場はこれ以上悪化しないと予想され、12年計上の多額の評価損の反動で13年に利益が急回復すると東洋証券では見ている。(キョウ)A株市況底入れ、規制緩和で手数料収入拡大へ
13年は、手数料依存度の低い収益構造の構築に向けた転換期の入り口にあたる。新規業務からの収益貢献がまだ限られていることから、株式市況が企業業績へ与える影響は引き続き大きい。12年の中国資本市場は株式がIPO減少・市況低迷、債券が相場堅調・発行急増という構図であったが、13年はA株市況の改善も期待される。委託業務では、株式の売買代金は09年以降最も低い水準を記録した12年に比べて一定の回復も想定される。平均手数料率も下げ止まりつつある。ただし、検討中の支店新設許可制の廃止などが実施されれば手数料値下げ競争が再び激化する恐れもある。一方、昨今の規制緩和を受け、証券会社の業務範囲が拡大しつつある。これらの新規業務は手数料収入の増大(金融商品の販売など)や、レバレッジを効かせた資産運用の効率改善(信用取引など)につながるものもあり、その将来性に注目したい。12年後半から一部の大手証券を中心に人員削減や給与カットを実施する動きもあり、中長期的には業界内の収益力格差が広がることも考えられる。(張)都市化や所得倍増を背景に不動産市況は堅調か
12年年初には、不動産購入制限やデベロッパーの資金繰り難により、一時期販売の落ち込みとともに、地方政府から開発用地の供給減、デベロッパーによる用地取得の手控えなどが見られた。その後、政府の金融緩和姿勢強化(12年6月と7月にそれぞれ1回の基準金利引き下げを実施)を受け、自己居住用を中心に需要が回復傾向を辿り、不動産の販売数量・価格も底堅い展開となった。これまでの不動産市場引き締め策で、投資・投機目的の不動産売買への抑制効果が十分得られているため、不動産価格が大幅に上昇しない限り(開発業者は物件価格を抑え在庫回転期間を短縮する方針)、更なる引き締め策の導入余地も乏しく、景況感の回復基調がより明確になっていくと考えられる。「都市化」や所得倍増計画の推進などを背景に用地取得で積極姿勢に転じたり、13年の販売目標を引き上げる大手開発業者も出てきた。13年の不動産市況は、地域別では1、2級都市が引き続き堅調と予想される一方、一部需要不足に直面している3、4級都市の市況回復にはまだ時間がかかりそうだ。(尹)3Gサービスが本格化するも費用先行
ブロードバンド接続サービスも含めた固定電話事業が横ばい、移動通信では2Gが伸び鈍化のなか、3Gが成長の牽引役となっている。本格普及期を迎える3Gサービスは設備費や端末補助金等の販売費用が先行しがちなことから、現状では利益よりも収入、収入よりもパケット通信量の伸びが著しい。中国の携帯電話契約数は、12年10月末現在で約10億9千万件と頭打ちとなりつつある。そうした中で、3G契約は引き続き順調な伸びを維持しており、12年9月末で契約数2億件を突破した。最大手の中国移動が中国独自の3G規格TD-SCDMAを展開しており、端末供給などでハンディを負っているため、現状の3G展開では大手3社の契約数・契約純増数ともにほぼ拮抗している(12年10月末の3G契約数は中国移動が7931万件、中国聯通が7006万件、中国電信が6274万件)。事業規模や収益力で中国移動に大きく水を開けられている中国聯通、中国電信にとっては、13年と14年は引き続き差を詰める好機。13年中に2Gユーザーの3Gへの大量移行が始まる可能性もある。(張)スマホ普及の波にのり、収益源は多岐にわたる
スマートフォンの普及に伴い、モバイル経由のインターネット利用者数は12年6月末に、はじめてPC経由の利用者数を逆転した。東洋証券では、13年もモバイル経由の利用者は一層増えると予想。インスタント・メッセンジャーやミニブログなどのSNSやオンラインゲームはスマートフォンの普及により一層身近になり、利用者数の伸長と利用頻度の増加が著しくなろう。サービスが活性化し、モバイル広告等は一層の成長が期待される。一方、著しい成長を遂げたEコマースサービスについて、利用の拡大や流通総額の増加は今後も続こうが、競争激化に伴い、新規投資や販促費の膨張が利益の押し下げ要因になると懸念。東洋証券では、巨大な会員ベースと良質なプラットフォームを擁し、多種多様なサービスを提供している企業に注目。アクティブ率の高いユーザーを多数獲得し、強力な会員基盤を築くことが重要であり、それに成功すれば、販売促進等を通じて、マネタイズ(収益化)が一気に加速する公算が大きいと東洋証券では考える。(趙)原油価格は高値圏で推移、石炭価格の低迷は当面続く
12年の原油価格は上下の振幅が大きかったものの、総じて高値圏での推移が続いている。13年に、世界景気の緩やかな回復による原油消費量の増加(IEAは13年の世界原油消費量が12年比で日量83万バレル増と予想)、米国による超金融緩和政策の継続による原油市場への資金流入、中東や北アフリカの政情混迷など地政学的リスクによる原油供給懸念などで、原油価格は高値圏での推移が続くと見られる。従って、原油高の継続は川上事業に引き続き恩恵を与えよう。また、都市化の進展などから天然ガス需要が急増していくと見られ、石油各社の天然ガスへの取り組みにも注目したい。12年の石炭価格は大きく落ち込んでいるが、その背景には火力発電所や鉄鋼会社など、大口顧客向けの需要低迷が長引いていることに加え、生産能力過剰に陥ったことがある。13年も需給バランスが大きく改善されず、石炭価格の低迷が当面続くと予想される。ただし、近い将来に実施予定の発電用石炭価格の一本化政策は石炭セクターにプラスに働くと見られる。(キョウ)電力需要回復、汚水処理やごみ発電等は都市化で注目
12年の電力業界は景気減速に伴い、重工業をはじめとした大口需要が低迷し、電力需要全般の伸びが鈍化したものの、卸売電力料金の値上げ(11年)効果の通期寄与や12年中の利下げ、及び石炭価格の低下などを背景に、電力主要各社の業績改善傾向が顕著となってきている。国内石炭生産の増加が続く中、13年の石炭価格は引き続き弱含みの推移が予想される。電力料金は目先的には再値上げを実施する可能性が低いものの、13年の電力需要は基本的に回復傾向にある。風力発電では、送電側のキャパシティーの問題もあり設備利用率の改善は当面見込みにくいが、12年の天候不順の影響で発電量の反動増も予想される。また都市ガスでは、天然ガスの供給拡大・利用促進に関する第12次5ヵ年計画といった政策面の追い風もあり、利用量の拡大とともにガス価格の段階的引き上げも見込まれる。都市化の推進との関連においては、今後汚水処理やごみ発電といった分野での投資が大幅に伸長する可能性があり、これら業界のリーディングカンパニーに引き続き注目したい。(尹)インフラ投資加速で鉄・非鉄市況は底打ちへ
12年前半では、不動産投資をはじめとした固定資産投資の伸び鈍化に鉄鋼業界の過剰設備問題が重なり、需要低迷と市況悪化が続いた。製鉄主要各社の12年6月中間期業績も赤字転落が目立った。一方、12年9月以降の政府による公共投資案件の認可加速もあり、足元の景況感の悪化は落ち着きつつある。鉄鋼の在庫調整は13年も続く可能性が高いことなどから、13年の鉄鋼生産と製品価格については生産量微増、小幅な価格下落を予想する。銅については、銅鉱石の需給に軟化の兆しが出てきており、銅製錬マージンの改善に繋がる可能性が高い一方、中国国内の生産量・生産能力の伸びが需要の伸びを上回っていることなどから、13年も大幅な市況改善は想定しにくい。アルミ業界では、価格下落にもかかわらず、生産設備を停止した場合のコストや生産再開に要するコストと時間を考慮して、国内メーカーを中心に生産量が引き続き増加傾向にある。過剰設備の状況が当面続く可能性が高いことから、アルミメーカーは13年も引き続きコストすれすれの経営を強いられよう。(黄)世界的な過剰流動性を背景に実物資産の魅力高まる
12年の金相場は上・下期で明暗が分かれた。上期には、米ドル高を背景に金相場の下落が目立ったほか、環境対策費や人件費などの生産コストの上昇も産金企業の業績を押し下げる要因となった。一方、下期に入り、米国の量的緩和第3弾(QE3)を中心に主要国が相次ぎ追加量的緩和に踏み切ったことで、金相場は9月末頃にかけて急反発する場面もあった。産金企業の業績も12年4Qにかけて改善傾向を示している。米FOMCが12年12月に量的緩和第4弾(QE4)を決定したことや事実上のゼロ金利政策を少なくとも15年半ばまで維持する方針であることなどから、13年の金相場は当面底堅い展開となる可能性が高い。また、増加傾向にある中央銀行の金保有も需要の下支えになりそうだ。リスク要因としては、米国の景気回復や雇用改善により現状の量的緩和策が後退することも想定される。供給サイドでは、中国主要産金企業の13年生産量は全体で安定的な伸びを維持する見通し。一方、環境対策費や人件費などの生産コストの上昇が引き続き利益の圧迫要因となる見通し。(黄)- ご投資にあたっての注意事項
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