にわかに相次ぐ補助金や値下げ
中国の乗用車市場で購入補助金の支給や値下げの動きが出ている。地方政府や一部メーカーの後押しで、市場底上げにつながるとの期待がある一方、いびつな競争を懸念する見方もある。この背景と今後の見通しを探る。
消費の底上げに加え在庫圧縮の狙いも
購入支援を主導するのは地方自治体と自動車メーカーだ。前者は新エネルギー車の新規購入または買い替え時の補助金支給というパターンが多い。数千元から1万元程度が"相場"と見られるが、成都のように最大15万元を補助する大判振る舞いもある。行政が消費底上げの旗振り役になっている。
一方、自動車メーカーはガソリン車の購入支援が目立つ。背景には、新車販売の伸び鈍化に伴う在庫圧縮の動きがあるようだ。7月の排ガス基準厳格化を前にした、末端ディーラーによる勇み足的な在庫処分との指摘もある。
3/1~12までの中国の乗用車販売台数は41万4000台で、前年同期比17%減。年初からの累計でも同19%減の309万4000台とマイナス成長だ。22年通年は前年比9.5%増の2356万台余りと好調だったので、その反動減とも見られる。ガソリン車の購置税(車両購入税)の半減措置(10%⇒5%)が22年末で終了したことも影響しているようだ。
むしろ値上げ、EVメーカーは強気姿勢
注目したいのは、新エネ車の値下げは限定的で、価格据え置きを表明するメーカーもあることだ。むしろ今年に入り値上げしている企業も目立つ。
理想汽車(02015)や蔚来集団(NIO、09866)などの新興EV勢はハイエンド志向を貫いていることもあり値下げによる販促は行わない方針だ。吉利汽車控股(00175)も、ガソリン車向けでは車両購入税の補助(半額補填)を行っているが、新エネ車が中心の傘下ブランド「LYNK&CO」は価格据え置きとしている。
その吉利は今年からEV製品の価格を2000~6000元値上げした。BYD(01211)、東風汽車集団(00489)、広州汽車集団(02238)も同様にEVの値上げに踏み切っている。新エネ車の購入補助金が22年をもって終了したため、メーカー側としてはその削減分を取り戻す(利益を確保する)意味もあるようだ。中国の新エネ車市場は新車販売の4台に1台を占めるなど急成長。今年1~2月の販売台数は前年同期比20.8%増で、自動車全体の15.2%減とは対照的だ。好調な市場を受けて各社とも強気姿勢を取れるようだ。
BYDはガソリン車を全廃して新エネ車に"全振り"しており、吉利や上海汽車集団(600104)もじわり新エネ車比率を高めている。業界の値下げの動きは、EVを中心とする新エネ車メーカーには大きな影響は及ばないという点を意識しておきたい。
(上海駐在員事務所 奥山)