ゼロ政策が相場の重し
中国株式市場では、厳格な「ゼロコロナ政策」(動態清零=ダイナミック・ゼロ)が大きな足かせになっている。緩和策も一部浮上したが、都市封鎖(ロックダウン)は各地で常に行われており、人民日報も10月上旬に3日連続で現行政策の徹底と継続を訴える論説を掲載するなど、見通しは明るくない。ただ、いつかは見直しや緩和に動くもの。ここでは新型コロナウイルスのワクチン接種の観点から展望する。
mRNAワクチン導入、本格緩和は24年以降?
中国では2回接種の「シノバック」と「シノファーム」(いずれも不活化タイプ)、1回接種の「カンシノ」(遺伝子組み換え型)が主に使われている。いずれも国産ワクチンだ。2021年3月頃から接種が本格化し、月間で4億∼5億回に上る時もあった。今年も3月までは1億回以上をキープしていたが、その後は急にペースが落ち、8月は910万回、9月は413万回にとどまった。背景には、接種済市民が多数なことやPCR検査が優先されている事情があるようだ。
また、"ゲームチェンジャー"としてメッセンジャーRNA(mRNA)の導入を待っているとの見方もできそうだ。9/29には「中国が開発した初のmRNAワクチンがインドネシアで認可された」と報じられた。雲南沃森生物技術(ワルバックス・バイオテクノロジー、300142)などが開発し、摂氏2~8度で保存可能という。
中国での接種認可も待たれるところだ。
中国衛生当局の専門家チームは今年3月、コロナ流行収束の条件の一つとして「ワクチンの効果向上」を挙げた。今後、前述の国産ワクチンに加え、米ファイザーやモデルナ製も導入されれば(コールドチェーン不備のため可能性は未知数だが)、現行政策からの脱却の道筋が見えてきそうだ。ただ、長い道のりになるだろう。年末から来春に接種を開始し、人口の90%程度の接種完了まで8∼12カ月と見積もれば、本格緩和は24年以降にずれ込む可能性もある。
「小出しの緩和」でも相場にプラス
短期的には、感染者の在宅療養容認や入境者の隔離期間短縮などの方針変更が注目される。全面見直しは先の話だが、「小出しの緩和」程度でもマーケットはプラスに反応しそうだ。
(上海駐在員事務所 奥山)