ゼロ政策下で緊張の日々続く
中国では新型コロナの感染再拡大を受け、各地でロックダウン(都市封鎖)や行動規制が行われている。上海市の封鎖の全面解除は6月以降になりそうだが、「ゼロコロナ」政策の下では感染者が確認されれば即封鎖や隔離に逆戻りとなるので、単純に「解除=自由」とは言い難いのが現実。しばらくの間は市内外の移動時にPCR検査の陰性証明などが必要になるなど緊張感を持った日々が続きそうだ。上海のみならず中国各都市で同様の措置が行われてもおかしくない。
「買いだめ」で物色されるセクターは?
この過程では、中国版「新しい生活様式」が浸透していくことが考えられる。具体的には、◆冷凍食品などの保存食の備蓄を増やす、◆免疫力を高めるため食事のヘルシー志向が進む、◆外食は必要最低限で自炊を増やす、◆旅行は「安・近・短」――などとなりそうだ。
今般の上海の都市封鎖を受け、北京や広州、鄭州などでも「明日は我が身」とばかりに食料品の買いだめが起きた。購入物資は普段より多くなるため、いきおい冷蔵庫のキャパシティー問題も出てくる。その流れで買い替えや2台目購入などの特需が起きれば、白物家電大手の海爾智家(600690)の追い風になるだろう。
また、長期保存に耐えうるロングライフミルクや即席麺などの人気が再燃すれば、内蒙古伊利実業集団(600887)、中国蒙牛乳業(02319)、康師傅控股(00322)などが賑わう場面もありそうだ。
進むライフスタイルの変化
調理器具などのキッチン用品の潜在的需要も出てきそうだ。小型家電に強みを持つ美的集団(000333)や杭州老板電器(002508)などの物色が期待されよう。在宅生活及びリモートワーク用の家具、各種デジタル製品、ヨガマットなどの室内フィットネス用品なども人気が高まりそう。小米集団(01810)は、各種ガジェット製品に加え空気清浄機などの生活家電も得意分野で、リーズナブル価格で消費者の高評価を得ている。
ネットやクラウド環境の構築で通信周りも再注目されていくだろう。ネットゲーム関連では、テンセント(00700)や網易(ネットイース、09999)が投資対象として見直されそうだ。
これらはいわゆる「巣ごもり消費」の一環だが、ライフスタイルの変化と共に日常生活に浸透し、市場でも長期的な投資テーマとして意識されていくと思われる。
都市封鎖の解除で「リベンジ消費」という概念がまたぞろ注目される可能性もゼロではない。ただ、富裕層はともかく、一般市民は日常生活や通常出勤など封鎖前の「原状回復」を優先するとの声が多いようだ。まずは派手な消費ではなく、足元をしっかり見ながら生活基盤の再構築を進めていくだろう。
(上海駐在員事務所 奥山)