「グリーン投資」とは環境に配慮した経済活動への投資を指し、日本では2020年に当時の菅義偉首相が2050年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標を示し、「グリーン投資の更なる普及を進める」としていた。海外でも同様に投資を活発化させる旨が表明されており、例えば欧州ではEUが2027年までの中期予算案約1兆8000億ユーロの3割を気候変動対策に充てるとした。
ただ、そうした潮流に一旦待ったをかけそうなのが、昨今のウクライナ情勢だ。欧米諸国等による対ロシア制裁やその対抗措置のなかで、ロシア産エネルギーの途絶リスクが特に欧州で意識されている。天然ガスで言えば、欧州は4割をロシアに依存しており、特にドイツで影響が大きいとされる。
IEAの予測によれば、2022年の欧州でのガス需要はLNG換算で3.9億トンとされ、供給ベースでは1.5億トンが域内生産で賄われるという。問題は域外からの調達が必要な部分で、ロシアからの供給が途絶し、尚且つ米国等からの調達が(物流リスク等で)困難になった場合、化石燃料に回帰するシナリオは充分に考えられ、そうした意味では短期的にはグリーン投資は萎んでいくこととなろう。
とはいえ、グリーン投資への強気シナリオは中長期的には不変だろう。
理由の1つとして挙げたいのが、運用におけるESGの重要性が定着してきた点。一部では、ESGの観点を踏まえた投資の方が、収益性のみを重視した投資よりもリスクを低減し且つリターンの向上にも繋がることが実証されているという。また、気候変動に対する意識の変化も挙げられる。企業と投資家を対象としたアンケート調査では、気候変動を「リスクとともにビジネス機会がある」と解釈しているものは双方共に7割程度確認された模様。機関投資家のあるべき姿を規定したガイダンスであるスチュアードシップコードでも、環境重視の明確化が世界的に進んでいる印象。
このように考えれば、グリーン投資は一時的に萎んでも、徐々に再度活性化するだろう。