現行のクルマは、次々に電動車に置き換わることが現実味を帯びてきたように見える。Bloombergの推計によれば、2021年の世界EV年間販売台数は289万台と、前年比17.8%増え、2017年比では184.08%増と、大幅に増加する見通しである。自動車全体の世界販売台数に比べればまだ低水準であるにも関わらず、電動化の波は既に空の世界にも及んできた。
今後空飛ぶクルマの主流になると言われているのが、「eVTOL」である。
eVTOL(イーブイトール)とは、「electric Vertical Take-Off and Landing」の略称で、直訳すると「電動垂直離着陸機」となる。簡潔に言えばヘリコプターやドローン、小型飛行機の特徴を併せ持った電動機体を指し、滑走路が不要で且つ騒音が少ないという特徴を有している。また、駆動時に温暖化ガスを排出せず、ヘリコプター等と比較して整備に要するコストが低いということも指摘されている。
一部推計によれば、eVTOLの市場規模は2025年には1.6億ドル程度だが、2030年には4.1億ドルへと僅か5年で2.5倍の規模に急拡大するとされている。「空飛ぶクルマ」というと某ハリウッド映画を彷彿とさせるが、渋滞を避けたい、短時間で移動したい、業務を効率化したい等々、様々な理由から「空を走ろう」という意思決定が当たり前になる日常は近いかもしれない。
空飛ぶクルマは数人の乗客を乗せて短距離を飛行することが想定され、2023~24年の実用化が見込まれている。例えば日本のスカイドライブ社は2023年の実用化を、独リリウムは時速280kmで飛行する7人乗りの2024年のサービス開始を、英バーティカル・エアロスペースは2024年の認証取得を目指している。また、トヨタが出資する米ジョビー・アビエーションは時速320kmで240km以上を飛行する5人乗りの機体を開発し、2023年に商業飛行を開始する見込みである。
空の世界の電動化は、空飛ぶクルマに留まらず、中距離を飛ぶ小型機(2023~24年実用化見込み)や長距離を飛ぶ中大型機(2035年実用化見込み)にまで及んでいる。ちなみに、後者については、エアバスが水素を動力にすると計画している模様。とはいえ、まずは空飛ぶクルマの到来を切望したいところだ。