「ゲノム」とは
昨年のノーベル化学賞受賞で殊更話題となった「ゲノム」というキーワード。これは、gene(遺伝子)と全てを意味するomeを合わせた造語とされ、生物の持つ遺伝情報全体を指す。ここには遺伝子やその発現を制御する情報等が含まれ、タンパク質はこれを基に転写・翻訳の過程を経て作られる。
米政府によるヒトゲノム計画により2003年に全ヒトゲノムが解読されて以降、動物や植物でも次々と全ゲノムが解読されている。
ゲノム解読によってもたらされた2つの事例
ゲノム解読によってもたらされたものの1つは、「食」分野。ゲノムを編集することでγ-GABA(アミノ酪酸)を多く含んだトマトや肉厚なマダイ等が生み出された。
もう1つが、昨今大きな注目を集めている新型コロナウイルスのワクチンだ。通常新規感染症のワクチン開発には10年の歳月を要するとされるが、同ワクチンに関しては、なんと1年にも満たない期間で実用化に至った。例えば米モデルナの開発した「mRNAワクチン」は、中国の研究チームがウイルスのゲノム情報を公開してから僅か2カ月程度で第一相臨床試験が開始されたという。同ワクチンは抗原ではなく設計図となるmRNAを投与し、体内で抗原タンパク質が作られた後に抗体が作られ、侵入したウイルスを撃破する仕組みだが、ゲノム情報さえ分かれば迅速に設計・合成が可能という利点を有する。
究極の個人情報であるゲノムの収集
(マーケット支援部 山本)