2021年は「環境元年」に
新たな10年の幕開けとも言えよう2021年が始まった。新型コロナ禍にあっても様々な投資テーマが注目された昨年の金融市場だが、今年特に注目を集めそうなテーマの1つとして「環境」が挙げられよう。留意すべきは、それが特定産業における話ではなく、我々人間社会全体に密接に関わるということである。
トレードオフの歴史
人類の歴史において、文明というものは驚異的な発展を遂げてきたということは火を見るより明らか。だが、その発展が健全だったかについては大いに議論の余地があるだろう。
18世紀後半より工業化が進展したことで文明は飛躍的に発展した。それに並行して起きたのがエネルギー消費量の急増であり、その対価としてもたらされた最たるものが環境破壊と言っても過言ではないだろう。つまり、発展と環境は、一方を得るためには一方を捨てなければならないといういわゆる「トレードオフ」の関係にあったとも解釈できよう。
それでも、足もとでは発展と環境を両立させようという機運が高まっているように感じられる。金融市場の事例を1つ取り挙げれば、2020年の国内公募の追加型株式投資信託の資金流入額に関し、ESGファンドが最も資金流入額が大きく、次点のDXファンドの2倍に達する規模とのこと。ESG投資が投資リターンを毀損するものではないという認識が広がっていることも背景にありそうだ。
社会変革だからこその「環境ファースト」?
環境において世界共通語にまでなっている印象のキーワードとして注目できるのが「カーボンニュートラル・脱炭素」。温室効果ガスの排出を徹底的に減らし、地球環境を保全しながら経済活動を最大化しようという思いが下地にあるのだろうが、このキーワードを単なる脱石油或いは脱化石燃料という文脈で読むべきではないかもしれない。
重要なのは、IoTやデジタル化、EVといった少し先の未来に関する投資テーマが象徴する「社会変革」だ。足もとで世界に300億台規模存在すると予想されるIoTデバイスが更に増加する傾向であるのに加え、人口は増加傾向にある。さらに既存の内燃機関系統が電気系統に置き換わるという諸事情を複合的に考えれば、電力需要の更なる増加が予想される。つまり社会変革がもたらす電力需要の増大というニーズを充足させつつも環境を保護するという二律相反を達成することが求められている。だからこそ、洋上風力やより高効率な蓄電池開発、バイオエネルギー等といった様々な取り組みが本格化しているのだろう。
確かに、環境への取り組みというと華やかさに欠ける印象を持つ方も少なくないだろう。しかし、日米欧中の4地域だけでも、2021-50年に脱炭素に要する投資総額は8500兆円規模との一部試算がある。世界全体で見ればそれ以上の市場規模と予想可能だ。「環境重視」の意義は具体的な数字にも表れている。
主な関連銘柄(銘柄略称)
(マーケット支援部 山本)