AIは友か否か
AI(人工知能)が本格的に注目を集めて久しいが、世間では様々な見方が交錯している印象だ。AIを幅広くビジネス等に活用する事例が確認できる一方で、職が奪われるといった懸念や差別を助長するといったようなAIの負の側面への関心が高まっている様子。1/31公開予定の映画『AI崩壊』においても、国民のライフラインとなっていたAIが暴走し命の選別を始めることが描かれることも、そうした世相を反映していると言えよう。
進むAIの啓蒙
1/28に、米グーグルがAIに関する最新の研究成果を公開したと伝わっている。報道によれば、AI開発部門責任者が翻訳や画像認識、ロボット等12分野の研究成果を説明。翻訳に関しては、音声をリアルタイムで翻訳して文字で表示する技術を発表。「スマートフォンを長い会話に対応したリアルタイム翻訳機として使えるようにする」とのこと。画像認識に関しては、機械学習を活用してインターネットにつながっていないスマートフォンだけで複雑な状況を把握できる様子を披露。「社会で機械学習に対する不安が広がっているが、具体的な技術や影響を示すことにより払拭していきたい」との意気込み。
昨年3月には東芝も音声認識AIを使って会議の文字起こしが必要なオフィスワーカーの作業量を低減させる技術を開発したと発表。言いよどみを瞬時に検出し、会議や講演での音声をリアルタイムで字幕表示するシステムに活用するとのことだ。
ちなみに、累計工場出荷台数世界No.1とされ、互いに相手の言葉を話せない人同士が自国語のままで対話できる双方向の音声翻訳機であるソースネクストの「POCKETALK(ポケトーク)」も、AI技術を活用したものだ。
AIをインフラに活用する時が来る?
AIの秘める更なる可能性として注目したいのが、水道インフラへのAI活用である。
事例として、日本人起業家が創業したフラクタ社を紹介したい。同社はAI技術を活用し、水道管の素材や使用年数、劣化情報等のデータと環境データを組み合わせ、地面を掘削することなく最適な交換時期を解析するソフトウェアサービスの提供を世界で初めて開始した。米国では既に引き合いが出ているようだが、日本においても水道事業に携わる専門職員が減少しているのに加え、上水道事業者の3分の1が採算割れの状態で効率性が重要になっているという情勢下では、今後需要が伸びていく分野だろう。ちなみに、同社は2018年に水処理事業を手掛ける栗田工業から約40億円の出資を受けたとのこと。
AIへの過度な依存は禁物かもしれないが、持続可能な発展を実現するためにも、「適度な距離感」で接するべき状況にあるようだ。
主な関連銘柄(銘柄略称)
主な関連銘柄としては、日本株ではソースネクスト(4344)、ロゼッタ(6182)、栗田工(6370)、東芝(6502)、NTTデータ(9613)、米国株ではアルファベット A(GOOGL)、中国株では科大訊飛(002230)などが挙げられよう。
(マーケット支援部 山本)