23日の香港株式市場でハンセン指数は5営業日続落。終値は前日比299.76pt(1.20%)安の24,651.58ptと約一か月半ぶりの安値で終了した。中国景気の鈍化懸念が投資家心理を冷やした。中国人民大学系のシンクタンク、中国マクロ経済フォーラム(CMF)は最新リポートで、今年第4四半期(10~12月)の中国GDP(国内総生産)成長率が3.9%になるとの見通しを示し、第3四半期(7~9月)の4.9%から一段と鈍化することが見込まれるとした。また、米ハイテク株安に加え、増税観測も不安視された。大型のインターネットプラットフォーマーに対し、中国政府が「データ税」を導入するとの観測が浮上。格差是正を目指す「共同富裕」を掲げる中国当局は、ネット大手に対して利益の還元を求めていく方針という。ハイテク関連銘柄で構成されるハンセンテック指数は同1.36%安の6,323.48ptと5営業日続落。反面、中国不動産セクターは高く、鉄鋼セクターも物色された。中国の金融当局が、一部の銀行に不動産事業向け融資の拡大を指示したと見られ、不動産開発の持ち直しで、鉄鋼需要も増加すると期待された。香港メインボードの売買代金は概算で1298億6000万香港ドルだった。中国本土から香港株に投資するストックコネクト・サウスバウンド取引は、成約ベースで15億6600万香港ドルの売り越しだった。
23日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比194ドル55セント(0.5%)高の35,813ドル80セントで終えた。前日に米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が続投する見通しとなったのを受け、米長期金利がさらに上昇し、利ざや改善期待から金融株が買われた。反面、金利上昇で割高感が意識されやすいハイテクなど高PER(株価収益率)銘柄は売られ、相場の重荷となった。米政権が23日に石油の戦略備蓄を放出すると発表したが、市場の想定通りで、材料出尽くしの見方から米原油先物相場が上昇した。ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は続落し、前日比79.619pt(0.5%)安の15,775.138ptで終えた。
本日の香港株式市場はハイテク株を中心に売りが先行しそうだ。米国市場で米長期金利が上昇したことに加え、当局がインターネット上の芸能人情報に対する規制の強化策を発表した。プロフィール掲載や芸能人が出演するネット広告の出稿が規制対象に含まれるようだ。背景には、芸能人のゴシップや追っかけが中国の主流価値観に影響を与えているとの認識があり、規制強化により前向きで健全なインターネット環境を整える狙いとみられる。有名インフルエンサーへの追徴課税も報じられており、ネット関連株は手がけづらい相場環境が続きそうだ。
(マーケット支援部 床井)
方向感を欠く展開か
23日の中国本土株式市場は続伸。上海総合指数の終値は前日比7.01pt(0.20%)高の3,589.09ptと約1カ月ぶりの高値水準を回復した。市場では、景気腰折れを回避するため、中国人民銀行(中央銀行)が緩和的な金融政策に舵を切るとの見方が広がっている。ただ、全体としては上値が重い。欧州各国で新型コロナウイルス感染再拡大に歯止めがかからず、欧州景気の落ち込みが中国経済にも悪影響を及ぼすと危惧されている。香港から中国本土株に投資するストックコネクト・ノースバウンド取引は、合わせて成約ベースで52億2300万元の買い越しだった。個別では、貴州茅台酒(グイジョウ・マオタイ、600519)、隆基緑能科技(ロンジ・グリーン・エナジー・テクノロジー、601012)、三一重工(サニー・ヘビー・インダストリー、600031)などが買われ、内蒙古伊利実業集団(インナー・モンゴリア・イーリー・インダストリアル、600887)、中国旅遊集団中免(チャイナ・ツーリズム・グループ・デューティー・フリー、601888)、宜賓五糧液(ウーリィアンエー・イービン、000858)などが売り越しとなった。
本日の中国本土株式市場は方向感を欠く展開か。中国人民銀行(中央銀行)が緩和的な金融政策に舵を切るとの見方が広がっていることはプラスだが、ハイテク株を巡る不透明感は重しとなろう。
(マーケット支援部 床井)