1~3月のGDP成長率は92年の統計開始以来の最高を記録。前年同期比効果があるも、消費の伸びが寄与。春節に帰省が自粛されたため、4月以降は旅行等のサービス消費が拡大傾向。今年は8.7%の成長を見込む。
1~3月GDP成長率は92年の統計開始以来の最高
4月16日に発表された1~3月GDP成長率は前年同期比+18.3%と、92年に四半期ベースGDP成長率が発表されて以来の最高の成長率となった。前年同期が同▲6.8%という前年同期比効果も寄与したとみられる。ただ、3月の鉱工業生産が伸び悩んだこともあり、成長率は市場予想(同+18.5%、Bloomberg)を若干下回ったようだ。
月次統計をみると、1~3月の小売売上高は前年同期比33.9%増、うち外食が同75.8%増と大幅に拡大し、消費を牽引。投資は、固定資産投資が同25.6%増となり、特に、製造業の投資は同29.8%増と好調に推移した。また、輸出は世界的な景気回復を背景に同49.0%増加した。一方、主要輸入品である鉱物資源価格の上昇もあり、輸入は同27.9%増となった。
産業別GDPでは、外食が前年同期比43.7%増、輸送が同32.1%増と拡大。ITは同21.2%増と19年7~9月以来の20%台の成長率へ回復した。
環境重視政策で3月に一部業界の生産が下押しか
3月単月の主要経済指標はまちまち。小売売上高は前年同期比34.2%増と、市場予想(同28.0%増)を上回った。特に外食は同91.6%増(1~2月同68.9%増)と、大幅拡大。2月の春節に帰省等が自粛されたこともあり、3月は反動で外食に行く人が増えたとみられる。また、固定資産投資は1~3月で市場予想(同26.0%増)並み。3月単月では同18.3%増、うち製造業の投資は同25.1%増で、ほぼ19年同月の水準に戻った。一方、鉱工業生産は同14.1%増と、市場予想(同18.0%増)を大幅に下回った。中国は2060年に向けてカーボン・ニュートラルを目標としており、CO2排出量の多い鉄鋼製品等に対し政府が生産抑制を指示したようだ。鉄鋼製品の生産は同12.3%増(1~2月同21.6%増)と伸び率が鈍化した。
景気は良好だが製品価格の上昇で市場金利が上昇か
4月3~5日の清明節の国内旅行者数は19年比5.5%減であった。5月1~5日の労働節では、鉄道も国内航空のチケット予約も好調に推移している模様。中国では新型コロナの感染がほぼ終息していると報じられ(新規患者数4月13日25人)、人々は旅行に積極的になりつつあるようだ。政府は6月までに国民の4割にワクチンを接種する計画。そうなれば、更に旅行、外食などのサービス消費が拡大しよう。また、1~2月の工業部門利益は前年同期比2.8倍、19年比でも57.3%増と拡大基調。設備投資も一段と活発化しよう。また、海外でもワクチン接種が進んでおり、世界景気の回復が輸出の伸びを押し上げよう。今年通年のGDP成長率は+8.7%を見込む。
足元では政府がCO2排出量の多い産業に対し減産を要求していることもあり、製品価格が上昇している。また、住宅価格も上昇傾向にあることから、金融当局は現行の銀行融資の抑制や住宅取引規制の強化だけでなく、市場金利を目先、高めに誘導することも考えられる。
(マーケット支援部 白岩CFA)