上場直後に当局調査
中国共産党の創立100周年の余韻が残っていた7月2日夕。中国のネット規制当局はサイバーセキュリティー法に基づき、配車アプリ最大手「滴滴出行(DIDI)」への調査開始を発表した。同社は6月30日にNY上場を果たしたばかり。7月5日には、同じくNY上場の満幇集団(YMM)が提供するトラック配車アプリの「運満満」と「貨車幇」、看准(BZ)が運営する求人サイト「BOSS直聘」への調査も開始した。突然の事態に市場で緊張感が走った。
プラットフォーム企業への批判強まる
中国のネット関連の規制は、昨年11月のアント・グループのIPO延期騒動前後から強化されてきた感がある。ネット融資やライブコマースなどの管理規定が矢継ぎ早に出されたほか、同年末の経済工作会議では特にプラットフォーム企業を念頭に置いた独占禁止の方針が決まった。今年4月には市場管理当局がプラットフォーム企業を対象に行政指導会議を行い、同下旬開催の中国共産党の中央政治局会議では「プラットフォーム経済への監督を強化・改善し、公平な競争を促進する」との表明があった。
規制対象のプラットフォーム企業の代表格は、テンセント(00700)、アリババ集団(09988)、美団(メイトゥアン、03690)、京東集団(JDドットコム、09618)など。前述の行政指導では、「二選一」(二者択一)行為や「市場支配地位の乱用」、「殺熟」(馴染みの客を騙す)行為などが批判された。各社株価はさえない値動きが続く。
ルール形成が主眼、ネット産業は転換期か
中国のネット経済は野放図気味で発展し、ややもすれば「やりたい放題の草刈り場」の様相もあった。ここに来て、遅ればせながらのルール形成は長期的観点からは健全な動きと言える。新興ビジネスの台頭をどう指導・管理するか腐心していた当局が、消費者保護という看板を掲げ、本腰を入れてきたようだ。政府関与の強まりを嫌う向きもあるが、当局が次世代を担う新ビジネスの芽を徹底的に摘むことも考えにくい。短期的な混乱を考慮する一方、ネット産業が新たなステージに向かう転換期とポジティブに考えることも必要だろう。
(上海駐在員事務所 奥山)