在庫積み増し期は株価上昇期 ~トランプリスクの中で政策関連と好業績銘柄に注目~
今年は在庫積み増し期で景気回復期にあたる。このため、企業収益は回復し株価は上昇しやすい。トランプリスクが顕在化する中、中国株投資は政策関連と好業績銘柄が注目されよう。
1月に株価が上昇したのは政策関連と好業績銘柄
1/24までの年初来騰落率は、ハンセン指数が+0.0%とかろうじて上昇となったが、上海総合指数は▲3.0%と下落。日経平均株価の+0.2%や米S&P500種株価指数の+3.7%を下回った。トランプ大統領が「初日だけ独裁者になる」と公言していたこともあり年初は下落したが、その後は1/17に発表の中国10~12月期GDP成長率に対する楽観的な見方もあり回復。1/20にトランプ米大統領が就任すると、同氏の発言に翻弄された。
1/24までの年初来騰落率では、①政策関連銘柄、②好業績銘柄が高い上昇率となった。政策関連銘柄としては、デカップリングの代表格である半導体が挙げられる。ファウンドリーの中国最大手である中芯国際集成電路製造(SMIC、00981)の年初来騰落率が+29.9%、ハンセン指数構成銘柄の中で最高の上昇率だった。上海市場ではファブレスのギガデバイス(603986)が+22.2%。医薬品ではベイジーン(06160)が香港市場で+20.1%だった。好業績銘柄としては、EコマースのJDドットコム(09618、+14.5%)が家電等の買い替え補助金による業績拡大期待で買われ、ハンセン指数採用銘柄の中では2番目に高い上昇率。また、上海市場では、長飛光繊光纜(601869)がAIネットワーク拡大期待で+28.3%だった。
在庫積み増し期は株価上昇期

「マクロ経済」で述べた通り、今年は在庫の積み増し期にあたり、これは企業業績の改善を促すため、株価にはプラス要因である。過去の推移をみると、在庫積み増し期は株価が上昇する傾向が見られる。トランプ大統領が米大統領選で勝利したにもかかわらず、中国株式市場が下げ渋っている背景には中国の短期景気サイクルが上昇期(=在庫の積み増し期)のためと考える。25年年内は上昇期が続くと見込まれ、株価には良い環境にあろう。米国の対中関税が第1次トランプ政権時のように実効関税率で10%pt程度の上昇にとどまる場合、追加関税の中国経済に対する影響は限定的で、中国株式市場の上昇余地は十分あると考える。
今後、株価上昇が見込まれる銘柄は、1月相場に見られるように、政策関連銘柄と好業績銘柄であろう。政策関連銘柄のうち、半導体関連は既にバリュエーションが高い銘柄が多いが、半導体製造装置の北方華創科技集団(ナウラ・テクノロジー、002371)は予想PER(25年)が26.3倍(QUICK予想)と相対的に低く株価の上昇余地があろう。中国政府が医薬品の欧米依存から脱却を図っており、その中では25年に最終赤字がほぼ解消すると予想されるベイジーンが注目されよう。また、米テスラ社のCEOであるマスク氏が米政府の要職に就いており、米国が自動運転に力を入れるとみられ、米中で自動運転の開発競争加速が見込まれる。百度(バイドゥ、09888)は自動運転の特許出願件数で世界最多。未だ同部門は赤字ながら、将来性と予想PERの低さ(8.6倍、QUICK予想)から仕込み時と考える。
(投資情報部 白岩CFA)