新規口座開設はこちらから

マルチチャンネルサービス

ホームトレードはこちらから

TOYOメール配信サービス

今月の特集記事【新春特集】中国二大ネット巨頭、アリババ vs. テンセント ~産業インターネットは次の成長柱へ~

中国IT御三家である百度(Baidu)、アリババ(Alibaba)、テンセント(Tencent)は、その頭文字から「BAT」と呼ばれている。ただ近年、百度はアリババ、テンセントに大きく水を開けられ、時価総額ではこれら2社の十分の一にも満たない状態。いま中国では、実質アリババとテンセントの2強による覇権争いの時代に入っている。以下では、両社の違いと成長戦略を探ってみた。

企業ミッション:B2B vs. B2C

アリババとテンセントはともに急拡大する中国インターネットの波に上手く乗り、それぞれの得意分野(アリババ=eコマース、テンセント=SNS)を深耕しながら、M&Aなどを活用し、多角化経営を推進してきた。ここで、経営原点に戻って両社のミッションを比べてみた。テンセントは、「ユーザー本位、テクノロジーでネットユーザーの生活を豊かにする」ことをミッションとしている。経営の原点はB2C(消費者向け)にある。同社が創業時に提供し始めたIM(インスタント・メッセンジャー)無料サービス「QQ」に続き、11年に提供開始となったスマートフォン向けチャットアプリ「微信(WeChat)」(月間アクティブユーザー数は11億人超)は、いずれも国民的なコミュニケーションツールとなった。膨大なユーザー数・トラフィック(情報量)が同社のコア・コンピタンスの源泉であり、ユーザー本位、ユーザーの体験を最重要視することが同社成功の秘訣と言える。

一方、アリババは、「どこでもビジネスが簡単に出来る(Make it easy to do business anywhere)」ことをミッションとしている。経営の原点はB2B(企業向け)にある。企業側にプラットフォームを提供し、商売をしやすいように決済、物流などのサービスも提供する。


主要分野におけるアリババvs.テンセント の状況

激しい攻め合いと棲み分け

両社ともこれまで得意分野における不動の地位を固めながら、M&Aや他社への出資などで、広範にわたるネットサービス分野で「攻め」と「守り」の攻防を繰り返してきた。テンセントは14年に自社のeコマース事業をJD.com(JD)に譲渡したが、JD.comやVIP.com(VIPS)などEコマース大手との資本提携を通じ、アリババを絶えず攻めている。一方、アリババもテンセントが得意とするSNSや音楽などの分野で攻め続けている。現時点、多くの分野において、両社が共存する状態だが、アリババはeコマースにおける覇者的地位を維持する一方、テンセント系がネット出前、音楽や動画配信などほとんどのB2C分野において大きくリードする構図となっている。

戦略投資スタイル:支配 vs. 協調

既存事業の強化と多角化経営による事業拡大を図り、両社ともこれまで積極的な戦略投資を行ってきた。起業専門メディアの鉛筆道の統計によると、19年1~11月、テンセントの投資件数は既に100件を超え、総投資額は830億元(約1兆3000億円)を上回った。一方、アリババは、投資件数は少ないが、物流、eコマースや生活サービスなどを中心とする大型投資が多く、総投資額は既に1100億元(約1兆7000億円)を超えた。戦略投資は両社の経営に多大な影響を及ぼしていると言える。19年2月、テンセントの劉熾平総裁は、「18年までに当社は700社以上に出資し、そのうち63社が上場、出資比率が5%を超える出資先の会社の時価総額は5000億米ドルを超えた」と戦略投資の重要性を強調した。

両社投資戦略のスタイルには明らかな違いが見られる。アリババは基本的に投資先をグループ内に取り入れ、出資先の支配権取得を戦略投資の目的とする。一方、テンセントは協調を重視し、出資先の支配権を取得しない投資スタイルを貫く。同社の擁する膨大なユーザーを出資先と共有し、お互いに利益をもたらす「共栄圏」を構築する。例えば、微信の「ウォレット」メニューにはJD.com、美団点評(03690)や同程藝龍(00780)など出資先のサービスメニューが並び、微信の膨大なトラフィックを出資先に流している。

産業インターネット&国際化:新たな成長の柱へ

両社とも人工知能(AI)、クラウドやフィンテックなど先端技術の研究開発及び活用に注力し、コンシューマ・インターネットにおける地位を強化しながら、産業インターネット及び国際化を次の成長柱に位置付けている。テンセントは18年10月に、創業以来3回目の組織改革に乗り出し、「クラウド・スマートインダストリーズ・グループ(CSIG)」を新設し、法人向け事業の強化に本格的に動き出した。クラウド分野では、アリババは国内シェア4割強を占める最大手だが、テンセントは着実にシェアを伸ばし、市場シェア12.3%を持ち2番手となっている(19年1Q)。また、両社のフィンテック事業の価値は1000億米ドルを超えると推測されている。中国のモバイル決済市場は、アリババ傘下のアリペイが54.2%、テンセント傘下のウィーチャットペイが39.5%の市場シェアを持ち、寡占状態にある(19年2Q)。

国際化では、アリババは東南アジア最大のECプラットフォーム「ラザダ(Lazada)」の買収など、得意のeコマース、モバイル決済やクラウドを中心に海外展開を推進中。同社は国際オリンピック委員会と長期パートナーシップを締結している。一方、テンセントも戦略投資などで積極的に海外展開を進めている。フィンランドのスーパーセル(Supercell)などを含む有力ゲーム開発会社の買収などを通じ、得意とするゲーム分野の海外市場開拓が期待される。

(東洋証券亜洲有限公司 キョウ)

似て非なる両雄のビジネスモデル

中国を代表するITプラットフォーマーと云えばアリババとテンセントの両雄。成長著しいデジタル企業の両社には数多くの共通点が見受けられるが、ビジネスモデルには大きな相違があるように思われる。

アリババはeコマースをグループの中核事業と位置付け、小売で最も重要な「情報」、「物流」、「決済」の領域でオンラインとオフラインの最適化を目指している。アリババは小売事業として、中国全土に点在する零細小売業者を淘汰して、自前でデジタル武装した近代的新規事業を全国展開するのではなく、彼らを事業パートナーとしてアリババ小売店チェーン「天猫小店」に参加させ、非効率的だった個人商店をオンラインの力で効率化し全国展開する考えだ。その戦略の一環として同社は家電小売り大手の蘇寧や、上海に本拠を置くスーパー大手の聯華超市などにも積極的に出資し、実店舗を切り口にして、無人スーパーや、実店舗とECを融合した次世代スーパー企業などの新規事業にも積極的に取り組んでいる。

一方テンセントはオンライン・ゲームから成長した純粋にデジタルな企業。中核となる事業は、11億人ものユーザーを擁するチャットアプリ「WeChat = 微信)」やオンライン決済の「WeChat Pay = 微信支付)」であり、典型的なB to Cの企業といえる。

両社に共通するのは、中国政府が厳しい外資規制を敷いてくれたお陰で、中国市場の中で大成し、巨額の資金調達に成功したことにある。今後の両社の成否を占うのは、M&A戦略だろう。国内の有力企業買収も、成長戦略としては必要だが、いま欧米諸国が中国企業のハイテク分野へのM&Aを一段と制限しようとするなか、ロボット、半導体などの最先端技術を有する外国企業を、如何にしてグループ傘下に収め、新たな成長ドライバーに据えるかが、両社の将来性を分かつことになりそうだ。

(主席エコノミスト 杉野)

ご投資にあたっての注意事項

外国証券等について

  • 外国証券等は、日本国内の取引所に上場されている銘柄や日本国内で募集または売出しがあった銘柄等の場合を除き日本国の金融商品取引法に基づく企業内容等の開示が行われておりません。

手数料等およびリスクについて

  • 国内株式等の手数料等およびリスクについて
  • 国内株式等の売買取引には、約定代金に対して最大1.2650%(税込み)の手数料をいただきます。約定代金の1.2650%(税込み)に相当する額が3,300円(税込み)に満たない場合は3,300円(税込み)、売却約定代金が3,300円未満の場合は別途、当社が定めた方法により算出した金額をお支払いいただきます。国内株式等を募集、売出し等により取得いただく場合には、購入対価のみをお支払いいただきます。国内株式等は、株価の変動により、元本の損失が生じるおそれがあります。
  • 外国株式等の手数料等およびリスクについて
  • 委託取引については、売買金額(現地における約定代金に現地委託手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対して最大1.1000%(税込み)の国内取次ぎ手数料をいただきます。外国の金融商品市場等における現地手数料や税金等は、その時々の市場状況、現地情勢等に応じて決定されますので、本書面上その金額等をあらかじめ記載することはできません。
  • 国内店頭取引については、お客さまに提示する売り・買い店頭取引価格は、直近の外国金融商品市場等における取引価格等を基準に合理的かつ適正な方法で基準価格を算出し、基準価格と売り・買い店頭取引価格との差がそれぞれ原則として2.50%となるように設定したものです。
  • 外国株式等は、株価の変動および為替相場の変動等により、元本の損失が生じるおそれがあります。
  • 債券の手数料等およびリスクについて
  • 非上場債券を募集・売出し等により取得いただく場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。債券は、金利水準の変動等により価格が上下し、元本の損失を生じるおそれがあります。外国債券は、金利水準の変動等により価格が上下するほか、カントリーリスクおよび為替相場の変動等により元本の損失が生じるおそれがあります。また、倒産等、発行会社の財務状態の悪化により元本の損失を生じるおそれがあります。
  • 投資信託の手数料等およびリスクについて
  • 投資信託のお取引にあたっては、申込(一部の投資信託は換金)手数料をいただきます。投資信託の保有期間中に間接的に信託報酬をご負担いただきます。また、換金時に信託財産留保金を直接ご負担いただく場合があります。投資信託は、個別の投資信託ごとに、ご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なるため、本書面上その金額等をあらかじめ記載することはできません。
  • 投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象とするため、当該金融商品市場における取引価格の変動や為替の変動等により基準価額が変動し、元本の損失が生じるおそれがあります。
  • 株価指数先物・株価指数オプション取引の手数料等およびリスクについて
  • 株価指数先物取引には、約定代金に対し最大0.0880%(税込み)の手数料をいただきます。また、所定の委託証拠金が必要となります。
  • 株価指数オプション取引には、約定代金、または権利行使で発生する金額に対し最大4.400%(税込み)の手数料をいただきます。約定代金の4.400%(税込み)に相当する額が2,750円(税込み)に満たない場合は2,750円(税込み)の手数料をいただきます。また、所定の委託証拠金が必要となります。
  • 株価指数先物・株価指数オプション取引は、対象とする株価指数の変動により、委託証拠金の額を上回る損失が生じるおそれがあります。

利益相反情報について

  • この資料を掲載後、掲載された銘柄を対象としたEB等を東洋証券(株)が販売する可能性があります。
    なお、東洋証券(株)および同関連会社の役職員またはその家族がこの資料に掲載されている企業の証券を保有する可能性、取引する可能性があります。

ご投資にあたっての留意点

  • 取引や商品ごとに手数料等およびリスクが異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をご覧ください。
  • 掲載されている情報は、当社が各種のデータに基づき投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成したもので、投資勧誘を目的としたものではありません。
    また、掲載されている情報の正確性および完全性を保証するものでもありません。意見や予測は作成時点の見通しであり、予告なしに変更することがありますのでご注意ください。
    掲載されている情報に基づき投資を行った結果、お客さまに何らかの損害が発生した場合でも、当社は、理由の如何を問わず、一切責任を負いません。株価の変動や、発行会社の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込むことがありますので、投資に関する最終決定は、お客さまご自身の判断でなされるようお願いいたします。
    なお、東洋証券および同関連会社の役職員またはその家族はレポート等に掲載されている企業の証券を保有する可能性、取引する可能性があります。
    情報の著作権は当社または情報提供元に帰属しており、いかなる方法を用いても、事前の許可なく複製または転送等を行わないようにお願いいたします。
PDFファイル形式のニュースをご覧になる場合は、Adobe Readerをインストール頂く必要がございます。
Adobe Readerダウンロードページへ